〔注意 役職、人物像、職種などの設定を相当程度改変しています。〕
さて、相当程度フィクション化していますが、なんだかつらくなってきたので一気にすっ飛ばしますね。
その後この大きな支店では、
課員のミスで謝りに行く、自分の判断ミスで謝りに行く、苦情処理で謝りに行く、お客様から預かったものがなくなってみんなで捜索、あの怖い係長が課長に昇進、同僚となったら急に優しくなってみんなが驚いた、などなど様々なことが起こりましたが、なんとか持ちこたえて、またまた転勤となりました。こんどは繁華街にある支店です。
振り返ると、大きな支店では、色々な問題が起こりましたが、課長同士は協力して難事に当たってこられたし、最初は緊張からかよそよそしかった部下の人たちとも、最後はえー、転勤しちゃうんですかあと言われるくらいに仲良くできて、よかったなと思える場所でした。
しかしながら、毎朝行きの電車に揺られている時は、今日も事件がないといいなあ、ゆーうつ、とずーっと思っていましたし、夕方帰りの電車では、今日も一日事件が起こらずに済んでよかった、とほっとして、または駈けずり回った挙句やっと鎮火したよ、とげっそりして、帰宅する毎日の繰り返しではあったのです。
今回、多分定年前の最後の転勤です。昔やっていたあの仕事へ、という希望は通らず、引き続き同じ仕事です。結局上がりが近いから、慣れている仕事を引き続きやってもらうのがよいだろうという温情なのか、忙しい所へは慣れているベテランを、という方便なのかわかりませんが。
着任してみたら、やっぱり雰囲気は違うし、人々に慣れるまでまた時間がいるなあ、という感じで少し疲れてしまいました。
そんな中、部下に苦情が発生、私の判断が甘く炎上してしまい、しかも、よくわかっていない事柄だったので右往左往していたら不誠実だと思ったのか、お客様が怒ってしまい、次長に収拾してもらう羽目になりました。
その次に今度は、係長と意思疎通がまずかったせいで、結果的に放置してしまった案件が発覚、納期が八週間かかるのに四週間で仕上げる羽目になり、部下や他部署にも残業をお願いするなど迷惑をかけてしまい、頭を下げるということが重なったのです。
こうして毎朝の通勤がますます憂鬱になり、帰りの通勤でほっと一息という日々が続く中こんな考えが浮かんできました。
自分には、もう新しい仕事を覚える意欲がもはやないのではないか。
今回はなんとか収拾したからよいが、このままいると、もっと大きなミスを犯して周りに迷惑をかけるのではないか。
新しくやれと本店から指示されることばかり増えて、スクラップされる仕事がない。しかもシステムが対応できないことは全部自分に振られるので神経が消耗する。それでミスが発覚すると自分のせい。
実情に合わないやり方を本社がうるさく指示してきて、工夫して乗り切ろうとするとそのやり方はダメだと言われ、無駄に時間をかける羽目になる。私の課は積み残しがないようになんとかできているからまだましだけど、隣の課なんか数か月分以上の積み残しが発生していて課長は暗い顔をしているし、これからどうなっちゃうのか。
本店上層部で起こったこちらのやる気をそぐような出来事が聞こえてきた。さんざんコンプライアンスと言われてきたけど、これじゃあね。
そういえば、一期後輩が年賀状で「辞めました」と言ってきましたっけ。
高校の同期も去年仕事辞めたけど、その前に休職したっていっていた。
子供たちは学校に上がっていたので、送り迎えはないけれど、帰ったらすぐにご飯作って食べさせて、洗濯して、風呂入れて、気分転換にネットを見ていたら、もう寝る時間です。それでふとんに入ると秒で意識が落ちます。
これって、すぐに眠りに落ちるというのじゃなくて、疲れすぎて気絶しているのと同じらしいですね。
そして朝早く目覚めると、心臓がどきどきしてもう眠れない。
通勤電車に乗っていると、車内広告が「金を使えー、金を使えー」と言っているような気がする。
何か、わたしちょっとまずくない？
そんな状態になったので、配偶者に相談しました。もう会社をやめたいと。
最初の反応は否定的なものでした。多分、すごく不安になったからだと思います。この時点で、配偶者が残業だらけの会社を辞め、転職して残業がほぼなくなっていたのはよかったのですが、手取り給料がぐっと減ったのも影響しているかもしれません。家計はどうなる。
うつ病かも知れないっていうのなら、ちゃんと診断受けたら。生活はどうなるの。子供の学費は。
それに対する私の答え。うつ病にはまだなってないはずだから、医者に行くのはいや。けどもう今の仕事を続ける意欲がないので辞めたい。年金でるまで十年ないから、そこまでつなげるお金があればやめてもいいよね。子供の学費も一人当たり一千万円分用意できればいいでしょう。
ということでお互いの手持ちの資産を計算して見せっこする。その結果を踏まえて判断する、ということになりました。
