かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

老後2000万円問題

2019年6月3日に金融審議会 市場ワーキング・グループが出した報告書において、高齢夫婦無所得世帯は、月々の年金では平均5.5万円赤字になるから、65歳から30年で2,000万円取り崩す必要がありますよ、と言って炎上しましたね。
でもこれ同じ報告書で65歳の金融資産の平均保有状況は、夫婦世帯で2,252万円といっています。95歳まで足りるじゃないですか。
一部だけ切り取って誤解をまねくような見出しをつけて報道するのもいかんですが、「65歳、平均的に2,252万円も金融資産を持っているのか」という箇所に気づいたとしても、実感として「2,000万円ですって、わたしゃそんなに持ってないよ」と思って炎上したので、仮に報告書をよく読んだとしても「平均で2,252万円と言われても」ということはあるでしょうね。
問題は2つ。
・ここで取り上げられている「平均」の概念がわかっていないので、数字と自分の状況をいきなり比べて反応してしまった。
・平均的な収支、平均的な金融資産残高、見合いで考えないといけない。とすると、あなたは、報告書に示された「平均的な収支」のような支出をしますか、もっと少ないのじゃありませんか、という所です。

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出典:総務省家計調査報告[貯蓄・負債編]2017年

上記は総務省家計調査報告[貯蓄・負債編]2017年 から持ってきたものですが、データの右側に少人数でも極端に数字の大きい人がいると、平均がかなり引っ張られてしまうんですね。極端な例でみてみましょう。
同級生4人の月給がそれぞれ25万円、20万円、23万円、28万円です。
4人の平均をとると、(25+20+23+28)÷4=24 平均は24万円。
4人は「私たちの年代としてはそんなもんなのね」と納得。
ここに高給を貰っているもう一人が来ました。月給は104万円です。
5人の平均は、(25+20+23+28+104)÷5=40 平均は40万円です。
5人とも納得いかない様子。4人は「えーそんな貰ってないのに」5人目は「私と同僚達からするとなんか少ないわね」
ということで、極端に値の大きいものが混じると、平均は、そのデータ集団を代表するもの、と言い難くなってきます。平均が意味をなさない場合はもう一つあって、例えば。
30、30、30、90、90、90だったらどうでしょうか。(30+30+30+90+90+90)÷6=60 平均は60ですが、どのデータとも離れています。これは属性の異なる集団が混ざっていると考えて、2つに分けた方がよいようです。
さて、平均が「その集団を代表する数字と感じられない」場合、代表する数字に何を選んだらよいでしょうか。
一つの代わりの数字が、中央値(メディアン)です。
小さい値から、大きい値へ順番に並べて、その値の個数の丁度真ん中にあたる数字をさします。先ほどの例で行くと、

順番 1 2 3 4 5
データ 20 23 25 28 104

データは5個なので、3番目の25が中央値です。これだと大分実感に近づきますね。
データが偶数の場合は、真ん中にデータがないので、その両側の2つのデータの平均をとります。
そして問題の2つ目ですが、「平均」的な家計収支、ということは、これも大きい方に引っ張られているのでは、と考えてみればよいのですね。もっとも家計収支の中央値というのは、示されていないようですし、
・収入は少ないが、貯蓄が多く、支出も多い
・収入は少なく、貯蓄も少ないが、支出が多い
・収入は多いが、支出も多い
・収入は多いが、支出は少ない
という具合に収入や貯蓄に支出が比例しているというわけでもないです。

大事なのは次の2点だと思います。
1.元のデータ分布によっては、平均は、あまり全体をうまく説明していないから、中央値も見ておきましょう。
2.少しでも不安を減らすためにすぐできること、支出の削減のために、家計を見直しましょう。