これまでの話で、株価は上がったり下がったりして予測がつかない。投下元本を割り込む価格になることもある。というお話をしました。
じゃあ、なんで株を買うのか。
将来、会社の利益があがって配当を貰ったり、株価が上昇したときに売った譲渡益が出て、銀行預金をしたときよりお得だったなあ、という結果を「期待」できるからですね。
ここまで読んできたのに「期待かあ、なんだか随分ふわふわした、当てにならないものに賭けているんだなあ、それ期待できるの?」と思うかもしれません。
その答えはイエスでもありノーでもあるのです。
ではその「期待」を具体例に当てはめて、数字「期待値」で眺めてみましょう。
なおここでの「期待値」は確率論で出てくるものとはちょっと違うかもしれません。
毎期決算で利益を純資産額の5%出している会社があるとします。株価は最初1株100円で純資産額と等しい評価がついていて、利益が増えることで純資産額が増えると株価も同額上昇します。業績は安定的で将来もこの状態が繰り返し続くものとします。
この株を
一括投資:最初に5株購入した場合と
ドルコスト平均法:毎期末に1株ずつ購入した場合を比較してみましょう。
期 | 期首株価 | 期末利益 | 期末株価 | 一括投資購入額 | ドルコスト購入額 |
0 | - | - | 100 | 500 | 100 |
1 | 100 | 5 | 105 | - | 105 |
2 | 105 | 5.25 | 110.25 | - | 110.25 |
3 | 110.25 | 5.5125 | 115.7625 | - | 115.7625 |
4 | 115.7625 | 5.788125 | 121.550625 | - | 121.550625 |
利益が5%出て配当されずに留保され、純資産額が順次増加し、それにつられて見合いの株価が高くなっていくので、ドルコスト平均法で毎期末に購入する場合、購入対価は高くなっていきます。
一括投資による投資額:100円×5=500円
ドルコスト平均法による投資額: 100円+105円+110.25円+115.7625円+121.550625円=552.563125円
第5期期首に1株121.550625円で売却したとすると、
一括投資:121.550625×5-500=107.753125円 の譲渡益
ドルコスト平均法:121.550625×5-552.563125=55.19円 の譲渡益
なんと一括法の利益は、ドルコスト平均法のほぼ2倍に膨れ上がりました。
(シナリオ1)
・この会社は毎期純資産額の5%の利益を計上していた。
・その状況が順調に続いた。
・その状況が株価に反映され、株価に影響した外部要因もなかった。
という順風満帆な条件が満たされたからこそ、このような結果が生まれたのかもしれません。
(シナリオ2)
・途中で会社の経営がまずくなり、過去同様の利益が上がらなくなった。
・コロナショック、リーマンショックのような株式市場全体を覆う株価下落要因に見舞われた。
このようなことが起これば、株価が下がった時にドルコスト平均法で購入した方が、5期首で売却したときに譲渡益が大きいかもしれません。
(シナリオ3)
・インフレが起こって、株価も純資産も利益も比例して増加した。(名目額の増加)
・途中で株式市場が過熱した。
このようなことが起これば、ドルコスト平均法は、株価がさらに上がった段階で購入せざるを得なかったでしょうから、一括投資の譲渡益との差がさらに開いたかもしれません。
株式資本主義は、株主から資本を集めた株式会社は、しのぎを削って人々が欲しがるサービスや物品を提供して利益を上げ、その利益を元に株主に配当を払う、又は、株価が上昇して株主は株を売却して利益を得るという循環を信じる人たちのためのしくみです。
その根源的な「期待」に順調に答えられるとするならば、ドルコスト平均法よりも一括投資が優れているといえます。
また言葉を換えていうならば、誰もが嫌がる(シナリオ2)の危険を引き受けるからこそ、ドルコスト平均法よりも多い利益を「期待」できるとも言えるでしょう。
ここでは、一括投資がドルコスト平均法より優れていると思われる面に光を当ててみました。