芥川龍之介「羅生門」
・羅生門に一匹の蟋蟀
・門の下で雨宿りしていた下人が途方に暮れていた本当の理由は。
・なぜ下人の右頬のにきびが描写されているのか。
・なぜ下人は死人の髪の毛を抜いて鬘を作って売ろうなどとしている老婆の着物をはぎ取ったのか。(ボロくて売れないよね。)
筆者の解説により、平安時代を舞台としながら、芥川がこの小説で描き出したかった近代人の苦悩がゆっくりと立ち上がってきます。
*映画だと何かが偶然写り込むことはありうるが、小説では描写されるものの意味が必ずある。
*不自然な場面展開には、作者が絶対そうしたかった意図がある。
*作者がわざと語っていないことに注目。
こんな観点で読んでいくと、まったく思いもよらない意味が立ち上がってくるのですね。
筆者によれば、身分制度の軛
それは今でも有効で、苦しい状況に陥った時、小説の人物の生き方を参考にしたり、同じようなことで悩んでいる人がいるんだなと生き方を重ね合わせたり、それほど私の状況は酷くないんだなと思ってちょっとほっとしたりする。
高校生の教科書に近代小説が登場するのは、今後生きていくときのための“ワクチン“のようなものだとおっしゃる。なるほど生きづらさに出会った時の抗体を作っておくんですね。
だから近代小説の名作を国語の授業で習って面白くなかったり、何の印象も残っていなかったのなら、それは作品のせいではなく、授業が悪かったのだそうです。
名作とされる小説は、やっぱり面白いんですよ、ってこと。
痛快必読。