かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

アダム・オルター著上原裕美子訳「僕らはそれに抵抗できない-「依存症ビジネス」のつくられかた」ダイヤモンド社

主としてネットゲーム依存症や行動嗜癖に関する本ですが、アップルウォッチを使うと、顔色が悪いのに「12000歩歩かなくちゃいけないのに、今日はまだ8000歩しか歩いていない」といってあと4000歩歩きに行ってしまう。数字に絡めとられて不快を脱するために行動するようになってしまっている。本来は、散歩など楽しい行動に選択をむけるべきなのに。料理する時に勝間和代さんは総重量の0.5%の塩分にすれば間違いなく味が決まるといって計っていますが、間違いない結果が得られる利点は大きいですが、手で塩加減する感覚の力は失われますね。特に自分独自の塩加減は出なくなると思います。
もっともお菓子は温度も分量もきっちり計って作らないと失敗する確率がとても高いから計らないわけにはいかないですけれど。
お金を貯めるのも、昔は付加価値が低くてそう簡単にはたまらなかったし、貨幣価値の信用度が動く出来事も沢山あったから、富を積み上げるのは大変だったしその維持も大変だった。現代はゲーム感覚になりかかっているかもしれませんね。
柳沢きみおさんが、「本当の金持ちはお金をいくら貯めたかじゃなくて、一生の間にどれだけ使ったかだ。貯めてばっかりいるのは金持ちじゃなくて数字持ち。」と言っていましたが、うなずける面と、ご本人の散財具合を見ていると、自己弁護に聞こえなくもない。いずれにせよ、自分とは縁遠い世界かと思います。
もうちょっとで勝利、という苦痛からの解放で得られる快感を味わうと止められない、という生理が生物に備わっているので、アルコールやギャンブルだけでなく、ネット依存、行動嗜癖、何もしないよりも苦痛を選んでしまうという心理実験は退屈が結構厄介なものだと改めて思わせてくれます。
ネットがやっかいなのは、アルコールやたばこのように遠ざけることができない、日常生活で使わざるを得ないものなので、いきなり断ち切ることでは解決せず、コントロールするすべを治療で学ぶという、困難性があることですね。
後ろの章で、デジタル断食、行動アーキテクチャゲーミフィケーションなどの解決策の紹介と批判を載せていますが、勉強をゲーム化する、VRで注目を逸らして痛みを軽減する、行動嗜癖を別の望ましい行動嗜癖に入れ替えるなど、多くは商業的な様々な取り組みも興味深いです。これからもデジタルデバイスとの付き合いを工夫して、社会的生物である人間に絶対必要な豊かな直接交流を増やしていく、という筆者の希望が終章を締めくくります。