かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

じいちゃんちのバヤリース

太陽に照らされて片道45分自転車で買い物に出かけると、往きの途中でもう「アイスコーヒー飲みたい―」になっちゃいます。今はまだ風が熱風でべったりじゃないから、汗をかいた肌に気持ちいいし、公園や学校など緑の多い道に入ると涼しくてほっとします。
これが無風とか熱風だったら、風を切って走る自転車ですら無力。出かけません。
それで「アイスコーヒー、冷たいやつー」と思ってペダルを漕いでいたら、急に小学生時代を思い出した。
自分の家の角から南へ70メートル進んで表通りに出ると、角から左に曲がって2軒目で母方のじいちゃんばんちゃんは履物屋をやっていた。当時はみんな木造かモルタルの商屋だったので、隣と1mの隙間もなく路地だけ作って密集して建築されていたのですが、逆に西日や熱風が入らない。冬は木枯らしが直接当たらない。木造すかすかの壁だから風通しがよく、日当たりが悪くて湿ってひんやりしている。店に入って左奥にじいちゃんの作業代兼帳場があって、そこを上がって右側、ガラス障子の向こうが居間になっている。
居間からさらに奥に行くと、床の高さ分下がった土間になっていて、土間の向こう側に床が貼られてキッチンセットと冷蔵庫が並んでいました。最初は、土間に下りてサンダルをつっかけ、向こう側でサンダルを脱いで床に上がっていたのですが、そのうち面倒になったのでしょう、木工の得意なじいちゃんが板で橋をかけた。
じいちゃんちの冷蔵庫には、孫のためにジュースが常備されていました。瓶入りのオレンジジュースで、バヤリースオレンジが定番品。それが時々三ツ矢サイダーになったりリボンオレンジになったりする。それにつられて、夏場はほぼ毎日通っていたものです。
東西に長い土間は東側にガラス引き戸がついていて鍵のかかる玄関にしていました。出た所は、隣家との隙間の路地になっていて、南に進むと表通りに出られる。自転車は通れますが、途中で方向転換はできません。
路地から玄関を見上げると、土間のある部分は、トタン板の壁に切妻の瓦屋根が山形に乗っていて店に別の家を継いだように見えました。
戦前に建てられたこの部分は空襲でも焼けずに残ったもので、店の部分は、途中で建て替えたか、内装工事をしたのか、覚えておりません。
薄暗い土間の西北側には、狭くて急な階段があって、あがると4畳半の和室がある。南側の窓を開けると、店の建物の屋根が斜めに迫って来て、光は入るが眺望がありません。いつも締め切っているので、むっとした濃密な空気がこもっています。何か人間以外のモノがいるような、それでいて、一人の秘密をまもってくれそうなそんな不思議な空間でした。
太陽に照らされて、そんな夏の一こまを急に思い出しました。

帰宅して玄関のカギを開けたとき、そういえば道中なんでマスクしてたんだろ、自転車乗ってただけなのにバカだわーと、初めて気づきました。
そしてアイスコーヒーで涼みました。
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