かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

サンクコスト或いはコンコルドの呪縛

お金や手間をかけてやってきたため、そのまま進むと損失になると分かっているのに止められない現象を指します。サンク=埋められてしまった、コスト=投じたお金や手間や時間、ということ。埋まっちゃったから取り戻せないんですよ。そこでコストを成仏させようとしてさらに無駄な行為に突き進んでしまうという。
買ってきた本を読み始めたらつまらない、でもお金をかけたから最後まで読まないと損だ、といって時間を無駄にし、読後感も悪い。
本や服の中古販売やメルカリが流行るのは、サンクコストが少しでも回収できるからでしょうね。買ってみたらサイズが合わなかった、色が自分に似合わなかった、よくあることです。そんな迂闊な方々のおこぼれに預かろうとしている私だったりもします。なかなか出会えないけどね。
本は図書館で借りてくることが多いので、詰まんなかったら即返しちゃえばいいので、最近では躊躇なく自分の時間を無駄にしないようにしていますが、割と面白い本にあたってしまい、時間を費やすことが多いのであった。

以前山登りしていた時のことですが、この呪縛に取りつかれると遭難、命の危険が伴います。
奥多摩の川苔*1山に上った時。川苔山から日向沢ノ峰方向へ北上して右へ曲がり長尾の丸を通って棒の嶺へ出るコースがあるのですが、山渓の登山地図では点線になっている。つまりガイドなどコース経験者がついていないと道に迷う危険なルートなのですね。無謀にもそのルートを通って棒の嶺へ行きたかった。棒の嶺まで出られさえすれば、そこから奥茶屋へ降りていく道は何度も通っているし行程も下りで40分ほど。奥茶屋からは舗装道路で川井駅まで一本です。
最初は地図に記載のある送電線の下を歩いていたので安心していました。しかしいくらいっても長尾の丸という頂上の看板にも至らず行程時間からしてもおかしいなと疑念がわいてきました。歩いていた道がどんどん細く、しかも小幅に土留が切ってある。これ材木担いで歩く歩幅ですよ。登山コースじゃないね。完全に林業専用歩道です。そしていきなり急な下りかと思ったら、道が消失、気づくと両手両足を使って崖を下っており、あっ道に迷った、と突然気が付きました。ここまで下りたんだから、また昇って元の迷った所まで戻るのはなー、と思うのがサンクコストの呪縛です。
これを山でやったら遭難、へたすると死が待っています。一般に、沢筋を下って間違った所に下りた場合、崖や滝に阻まれてそこから進むことはできなくなる。しかも山懐が深い*2場合、方向も見失われます。むしろ尾根筋に上りなおして引き返すのが助かる道なのです。時刻は午後3時過ぎ。通常ならばふもとが見えていないといけない時刻なのです。なぜかというと林の間の道や、日蔭の尾根を進む時、もう日が差していないので足元が見づらく足をくじくと動けなくなるし、人家のある所や自動車の通行できる道に出るまでに日が暮れてしまうと、道は一方的に下っているわけではないから、下りる方向がわからなくなる恐れがあるからです。
という知識はあったので、既に大汗をかいていましたが、来た道を引き返して、水をすべて飲みつくして川苔山山頂に戻りました。
午後4時を回っています。
それからメインルートを降り始めましたが、道ははっきりしているんですがすごい下りで、お猿のように両手両足を使って下りる。途中水場マークがある所で、100メートルほど下って水を汲んで戻るという、肉体消耗と水枯渇による身体消耗を天秤にかける場面もありましたが、冷静に考えて水を汲み、再出発。最後の一滴を飲み干して後、どんどん暗くなってくる中、麓の集落の明かりが見えてきたときは涙が出ました。ヘッドランプも持っておらず、足元は真っ暗に近い、ここで油断しちゃだめだ。集落のかすかな明かりを頼りに足元を確認しながら石ころだらけの登山道を下ります。

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左下画面外に奥多摩駅、右下画面外に川井駅

駅について、自販機のジュースを一口飲んだ時の安心感といったら。罰当たりですが爽快感もひとしお。

ということで、変だと思ったら、サンクコストぶっちぎって止める、方向転換することがことが大事です、と言いたかったのですが、なぜか自分の経験では、最近は大したコストをかけていないので、ちょっと昔の登山の話で例えることになってしまいました。
まあお金を掛けてなくても、変だなと思いつつ習慣でやっていることをきっぱりやめることは、精神衛生にもとてもよいように思います。甘酒よいかと思って始めましたが、やはりだるくなるのでやめる、とか。しょぼい例ですみません。君子は豹変しようね。
これ、オリンピックの話をしているわけじゃないですよ。

*1:地図では川苔山ですが川乗山が正しい

*2:人家のあるような麓から遠いということ