かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

近藤恒夫「真冬のたんぽぽ 覚せい剤依存から立ち直る」双葉社

ちょっと前だと清原、更に前だと酒井法子、もっと前だと田代まさし
薬物依存は犯罪とされていますが、その前に病気、依存症なのですね。
覚醒剤は禁断症状がない、というのは初めて知りました。
しかし一度でも覚醒剤を試してしまうと、その快楽を脳が憶えていて、十年間クリーン*1でいても何かのきっかけ、淋しさや人間関係、金銭的な悩みなどでスリップ*2してしまう。酒井法子の旦那の自称プロサーファーの方もそうだったとのこと。
これは薬物依存から立ち直ろうとして“ダルク“という組織を立ち上げた人のお話。
薬物依存は治るということがない。完治したと言えるのは、クリーンなまま死んだら、初めてその時完治したといえると。
だから薬物依存者に説教したり罰を加えても無駄。淋しくさせないようにする、同じような経験を持つ者の話をミーティングで聞けるようにとにかくミーティングに出席させる。そして同じ経験が耳に止まれば自分もやがて正直に自分の弱さを人に開示できるようになる。
もちろん、この過程でダルクから離れていなくなってしまう人、スリップしてしまう人は沢山でます。でもまたくるのであれば受け入れる。
アル中の話を前に読みましたが、薬物は一度落ちるとほとんどすべての人が依存になるのですね。アルコールだと依存しないで付き合っていける人がほとんど、ただし少数の人が依存症になって悲惨なことになるのとは対照的です。
薬物依存になると、薬のことしか考えられなくなる。非常に自己中心的。だからミーティングに参加させても人の話が聞こえるようになるには少なくとも三か月はかかるそうです。
その後、ダルクの寮から出て、仕事で収入を得られるようになってもミーティングに通い続ける。「二度とやらない」と固く決意するのは却って危ない。それよりも「ジャスト・フォー・トゥデイ」今日一日やらないようにしよう。
薬物依存者に限らず、明日のことを心配して不安になり、今日やるべきことに手がつかなくなる。過去の失敗や後悔に囚われ自分を責めて今日一日が無為になる。昨日のことは「ヒストリー」明日のことは「ミステリー」今日は「ギフト」ジャスト・フォー・トゥデイでいきよう(同書P155からまとめ)
この辺はアル中のAAと同じ考え方です。ミーティングでは司会者がお題を出します。「怒り」「妬み」「盗み」「隠し場所」など。そして自分の体験や感じたことを「私は」を主語にして話す。言いっぱなしの聞きっぱなし。
十年クリーンでいても突然スリップしてしまう怖さ。これは脳のせい。だからいくら厳しく罰してもやめられないわけです。刑務所を満期退所すると誰も面倒をみてくれないから、離婚養育費支払い失職状態で抛り出された出所者はストレスに耐えられずまた薬物に手を出してしまう。
作者は言います。元々人間関係でストレスをためやすい人が薬物依存になりやすいから、ちょっと良くなったからって自分の食い扶持を自分で稼げるようにならなきゃ、と思ってしまうと却ってまたストレスをためて逆戻りになる。だから社会復帰じゃなくって社会参加でいいじゃないか。社会へでてスリップする危険を冒すくらいなら、ダルクの周辺でボランティア的な仕事をしているほうが本人にとっても社会にとってもほどよいでしょう。
あ、これストレスで会社辞めた私もそれがいいかもしれない。セミリタやリタイヤ人にも当てはまるかもしれませんね。
薬物依存症は甘くない。永遠に続くマラソンのように薬物からの誘惑を拒み続ける道の途中でしかないから。
厳罰にすればいい、と思っている方には特に一読をお薦めします。


*1:薬物を使用しないこと

*2:薬物を使用してしまうこと