かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

駅バス物件はオワコン

牧野知弘「こんな街に「家」を買ってはいけない」角川新書を読んでいるのですが、大都市郊外の駅バス物件はぜんぜん、まったく売れないそうです。
駅バス物件という言葉を初めて聞きましたが、最寄駅から徒歩ではなくバスに乗り継がないとつかない所にある住宅ということですね。
この本は2013年度の住宅・土地統計調査に基づいて書かれていますので、その次の2018年(平成30年)のデータをひっぱってみました。

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平成30年住宅・土地統計調査(総務省
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平成30年 住宅・土地統計調査 表2より抜粋

(用語解説)
一時現存者のみの住宅…昼間だけ使用しているとか、何人かの人が交代で寝泊まりしているなど、そこにふだん居住している者が一人もいない住宅
二次的住宅…ふだん住んでいない別荘や、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅
その他の住宅…上記以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅などのほか,空き家の区分の判断が困難な住宅などを含む。

居住世帯のある住宅は 5361 万6千戸(総住宅数に占める割合 85.9%),居住世帯のない住宅は 879 万1千戸(同 14.1%)。
居住世帯のない住宅のうち、空き家は 848 万9千戸と2013 年と比べ29 万3千戸(3.6%)増。また総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は 13.6%と2013 年から 0.1 ポイント上昇し過去最高。
空き家の内訳について2013 年と比べると「賃貸用の住宅」が3万5千戸(0.8%)増、「売却用の住宅」が1万5千戸(4.9%)減、「二次的住宅」が3万1千戸(7.5%)減、「その他の住宅」が 30 万4千戸(9.5%)増となっている。

牧野さんによれば、空き家のうちその他の住宅が問題で、モーレツサラリーマン時代に、土地の値段がどんどん上がって、それにつれて購入できる一戸建てがどんどん郊外に移って行った。30年や35年ローンでやっと買って長時間通勤に耐えたものの、大きくなった子供たちは皆夫婦共働き。職住接近でないと体がもたない。長時間通勤を嫌って中心部に近い所のマンションなどへ居住。子供が出ていった後の一戸建ては老夫婦には広すぎる。庭の手入れも億劫だ。分譲住宅は駅からバスに乗らないといけない場所で、周りはみな老夫婦のみ。施設へ入ったり亡くなったりしてどんどん人が減ってくる。スーパーも閉店、小売店も店主の子供は勤め人。継ぐ気なんかないから代替わりせず廃業。買い物も不便になってきた。また山を切り崩して宅地化した場所が多く、駅まで急な坂道を往復するのもつらい。じゃあ、ここを売って駅前のマンションに移ろう。と思ったところで古家付の一戸建てを買おうという人はいないので買い替えようにも買い換えられない。
親が亡くなる頃、既に子供達も50代60代、別の場所にしっかり根を張っていて、戻る気などはさらさらない。相続が発生して、さあこの家をどうしよう。不動産屋に行ってみてもはかばかしい返事もなく、じゃあ更地にすれば買い手がつくかも、と思っても、取り壊しに何百万もかかるときいてびっくり。さらに更地にすれば今まで小規模住宅の特例で安くなっていた固定資産税が一気に6倍になる。
ということで問題先送りになって、誰も住まない空き家が全国的に増えているそうです。
以前は地方に過疎化と高齢化で限界集落と呼ばれる問題として注目されていましたが、それはほぼ数字的には落ち着いた。人口の自然減が均衡したということです。ところが今は、首都圏郊外が大量の空き家を生み出しつつある。
不動産が動産と違うところは、資産が滅却しないことです。土地は捨てられません。国も地方も上屋のある使い道のない土地は引き取ってくれません。それでいて固定資産税は毎年かかってくる。かつては絶対値上がりするという土地神話の元、一家の資産と考えられていたものが、いまや厄介な負債に。
以前は相続で取り合いになった不動産も、今では押し付け合う厄介もの。
筆者の提案する出口戦略は2つ。①とことん住み続ける。死後はよしなに。②ともかく買い手が出たらいくらでもいいから売ってしまう。
本の最後の方に、不動産は投資、自宅を所有するなんてばかばかしい利益を生まないから、という筆者の友人が登場します。築5年から7年程度の分譲マンションを買って賃貸に出し、5年程度運用して売却。「不動産は最終的に出口で売れるかどうか。運用して収入を得て、節税して、最後に売却して完結さ。」
築15年以上になると、共用部の改修も多くなり、専有部分の設備にもお金がかかるようになる。
どんなに立地が良いマンションでも、長くもっていると管理組合で大規模修繕の話が出てくる。これをまとめるのはエネルギーがいるでしょうね。マンションは、そこの人間関係も含めて引き受けなければならない。筆者の友人はそのへんを見切っていますね。
不動産は持ち家だろうが投資物件だろうが、インデックス投信とは違って出口もしっかり考えていかないと、とんだ目に会うこともある、不動産の怖さがよく感じられました。
早期退職の作戦の一部として、郊外の土地建物の掘り出し物を安く買って住まうという作戦はありだと思いますが、駅から急坂を上がって徒歩30分とかだと、私はやっぱりいやだなあ。個人的にマンションは昔から買いたくない派。一棟買いならともかく。人間関係がわずらわしくないからマンション、じゃないんですよね。管理組合厄介そう。まあ、一戸建てでも隣との境界とか枝が伸びて来たとかゴミ屋敷とか騒音とか色々あるでしょうけど。
平穏に生きていきたいものです。