インデックス投信、退職金特別キャンペーン金利、ポイ活なんて言葉が出てきますが、この本ではそれはあくまで小道具。お金の問題にぶつかった時の、不安やとまどいといった感情に丁寧によりそって話を展開していくところに主題があります。
例えば、美帆は、一人暮らしをおしゃれな目黒区のマンションで満喫して、いたはずが、保護犬を飼いたいなと思ってから一戸建てやペット可能なマンションの値段を知って、姉の真帆の「まずは固定費の削減からだよ」と言っていたことを素直に受け止めて引越しを考える。
祖母の琴子さん。夫が亡くなってからがたっと減ってしまった年金。貯金は一千万あるけど健康に問題が起きたらと不安になり働き口を探す。
元気だけど安月給の夫と結婚してノルマがいやだった証券会社をやめて専業主婦になった真帆は、ポイ活や月2万円の食費でしっかり節約を楽しんできたはずなのに、友達の大きなダイヤの婚約指輪を見て心が揺れ動く。
美帆と真帆の母である智子さん。子宮癌のステージ1で手術をして帰ってきたら、家事をまったくやらない夫が当然のように食事を待っていて、友人の熟年離婚の相談に乗ることになったこともあり、自分も揺れ動く。
性格的に感情移入しにくい人々もわき役として登場しますが、各章で主人公となる人々は基本的にみないい人です。欠点をかかえているけど、最後はほぼハッピーエンドで読んでいて安心感もあるし、かといって問題提起も忘れていません。
今ここにある問題を主人公たちの心のゆれでしっかり取り上げていて、ちょっとその解決方法はうますぎるなぁというところはありますが、読みおわってさわやかな本です。