かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

暗記する・覚えるとはどういうことか、どうやったらできるか。

上の子が高校に上がって、英単語教材をやっています。エクセルに日付とページの割り振りを入れた簡単な計画表を一緒に作って「一日〇ページ覚えるんだ」なんて勉強しています。
ところでこの単語を覚えるということ。単語を暗記するなぞとも言う。
一体どうなれば覚えた、暗記したといえるのでしょうか。
例えば試験範囲が指定されたとして、その範囲のページに単語と対応する日本語が出ているとする。その場合は、日本語が書かれた紙が渡されて、その右に英単語のスペルを正しく書くことが覚えたことになる。
または英単語が書かれた紙が渡されて、その右に対応する日本語訳を正しく書くことが出来たら覚えたことになる。

英単語と日本語訳を一対一で対応させて覚えることについて私は、“必要悪なので、名詞動詞形容詞副詞の内容語に限って、その言葉の初出時の学習に限って認める”立場です。
例えば、see=見る と単語帳に載っているものとします。
範囲を指定して単語帳の一対一を答えさせるなら、問題はない。しかし英文を日本文にする問題が出たらどうでしょうか。
「見て、素敵」を英文にすると「Look,it’s cool!」、見る=seeじゃ対応できません。
また、単語帳の範囲に 見る=seeと見る=lookと二種類含まれていたら。
“see”から見るを書かせるのならいいけど、“見る“から英単語を書かせるとき、seeでもlookでもどちらでも正解にしますか。
最初は英単語の概念を掴むためにsee=見る でいいでしょう。しかし実際の文章や発言で英文として使う段になると、どういう場合に”see”を使い、”look”を使うのか、言いたいことから組み立てられる英語の文章に的確な単語を選択できなければならないのです。
また「Let me see.」という言い方があります。これはlet+O+動詞の原形という形で、let(させなさい)me(私に)see(見ること)で、私をして見させなさい、こなれた日本語にすると「ちょっとまって」「ちょっと考えさせて」という訳が当てはまります。この場合は、文字通りの目で見るではなく、頭の中を参照する、私に理解する時間をください、みたいなニュアンスになります。
この二つの側面から、see=見るに意味を固定することの危険性がお判りになると思います。
学習の初めにはseeとは代表的にどのような概念かわからないと英語に取りつきようがありませんから、see=「見る」を出発点とするのは止むをえません。
とっかかりのための必要悪、と私が言った意味がお判りでしょうか。

さて、では単語と日本語を結び付ける所へ戻りまして、どうやったら英単語を日本語の意味と関連付けて覚えられるでしょうか。
・最初子供に推奨した方法

英単語を音読して、直後に日本語訳を音読する。
英単語を音読して、直後に日本語訳を音読する。(2回繰り返すということです)
付属の解説を音読する。主に、接頭辞、語幹、接尾辞を分解してそれぞれの由来を紹介しています。
その右に連なる、句として使われる具体例を音読する。
次の単語へ。

子供にやらせてみたところ、ところどころ英単語の発音、アクセントを間違える。
特に語頭に第一アクセントがくる発音が苦手ということがわかった。
英語の発音でググって貰い、発音が聴けるページを読んでもらった。
IPA(国際音票記号)をざっと解説し、第一アクセント(`)と第二アクセント(‘)を教えました。
最初の2つの繰り返し作業を

英単語の発音記号とスペルを両方見て音読し、直後に日本語訳を音読する。

に変えました。

解説を含めて全文を音読していくのは、声を出して骨導音を聞く、目で見ながら音読するのでスペリングの全体の形も見る。
五感のうち、目、耳、口を総動員して相乗効果を狙います。
発音からだけでは綴りを間違えそうなものは、指でスペルを書くのもよいです。
黙読するとどうしても読み飛ばししてしまうし、発音できないものは覚えられない。
言葉はまず音として成立し、文字が発明されたのはずっと後です。
また、文字は実は複雑な発音を限られた文字に無理やり当てはめて表現しています。
なぜなら、発音ごとに忠実なつづりを対応させようとすると文字の種類が多くなりすぎてしまうから。
文字は発音を想起させるための道具であり、簡略化された記号なのです。
言葉はまず音から。

ところがこの方法には欠陥があることがわかりました。
日本語を発音すると、英語と日本語の一意対応が強化されてしまう。
英語と日本語は一対一の関係になく、英文の中で意味を正確に取るにはその文章に相応しい日本語の単語を都度当てはめて理解の助けとしていかなければならないのは、先ほどご説明した通り。
また、英単語の日本語訳でよくでてくるのが「~〇〇」という表記で、これをいちいち「なになにが」と声に出して読み進むが結構心理的に辛いのですね。しょっちゅう「なになにが」と言っていると口が疲れる。

そこで先ほどの学習法を一部変えました。

英単語の発音記号とスペルを両方見て音読し、直後に日本語訳を黙読する。(繰り返しなし、一回だけ)
日本語の意味が黙読でとれない時だけ日本語も発音する。
付属の解説を黙読する。主に、接頭辞、語幹、接尾辞を分解してそれぞれの由来を紹介しています。
その右に連なる、句として使われる具体例を音読する。
つまり、英語の部分は音読し、日本語の部分は黙読する。
次の単語へ。

これで同じ日本語を繰り返すことによる、口と脳の疲れが省略できるし、何より英語だけを音読することで、学習中に占める英語に触れ、英語で反応する時間の割合を高め、英語による直接の概念理解に一歩近づく。

こんな狙いを込めてみました。

使っている教材は見開きで単語が7~8個紹介されていますが、次に考えることは、これをどの程度の頻度で勉強するかということです。

暗記を完成するには、同じ教材を繰り返し学習する必要があるのですが、繰り返しが苦痛にならない方法を考えないとイヤになってしまう、脳が疲れて受け付けない、という現象が出ますので、いかに脳をおだてて働かせるかという工夫が必要になってきます。

笠原究/佐藤臨太郎「英語テスト作成入門-効果的なテストで授業を変える!」金星堂 という本に興味深い実験結果が載っておりまして、
2週間の間、一日に20単語を2サイクル勉強した集団と、一日に5単語を8サイクル勉強した集団を、最後にテストした結果、前者の点数が上回っていたという。

繰り返し学習をするにあたって、ある程度の時間間隔を置くこと、繰り返し回数が多いほど結果が良い、ということが導かれました。

これは体感的に分かることで、細かく同じことを繰り返していると段々嫌になって雑になってきますね。
脳が喜ばないことは、憶えられない。

そこで私の考えでは、教材をなるべく繰り返さずに、一回読みで最後まで行ってしまう。
最後まで行ったら最初に戻る。
最初に戻った時、覚えていること憶えていないことがまだらに感じられると思いますが、本一冊終わってから戻ると、新鮮な気持ちで文章にあたれるのではないか。そうすると読み飛ばしが減ると思います。

使っている教材(LEAP)は結構厚めで、490ページもあります。
一回目を読んでいる途中で、小テストや定期考査になってしまいますから、直前には試験対策モードとして指定範囲を取って返す、という使い方になります。
全体を大きく流しながら、必要に応じて部分的に繰り返す方法。

エクセルに日付を入れた表を作らせて、ページの割当を右セルに入力して計画表を作らせてみたものの、毎日記入して進捗を確認する、というところまでは無理なようです。
やり方や進捗の把握・管理方法はまだまだ手探りです。

先ほどの「5単語8サイクルより20単語2サイクル」について、私が合唱に応用したところ非常に効果的であったので、その説明で締めくくりたいと思います。
参加している合唱団の一つは、演奏会に出演するために出演オーディションに通らないといけません。出演オーディションはソプラノ、アルト、テノール、ベースの各パート一人ずつ前に出て、直前に指示された部分を暗譜、つまり楽譜をまったく見ないで演奏してみせなければなりません。
演奏する曲は、オーケストラ付きの曲ばかりで、合唱部分が長大。今度演奏する曲は130ページもあり、ソロや楽器だけの間奏があるものの8割以上が合唱です。
試験範囲は“全部”ですから、全部暗譜しておかなければ出演オーディションを通りません。
本番で譜面は持ちませんから、出演オーディション段階で暗譜しておかなければ、そもそも話になりません。

以前は、オーディション一週間前くらいから、聞く、聞きながら楽譜を見る、部分的に歌ってそれを繰り返す、という練習方法をとっていました。
ギリギリにならないと本腰を入れない悪い癖ですね。
現役時代は時間がありませんでしたから、通勤の行き帰りはMP3プレーヤーで聴き、電車内では楽譜を眺める。
声を出せるのは家に帰った時だけ。
ですから隙間時間は楽譜を見たり、声を出さずに歌ったり。
そんなにまでしていましたが、実は効率が悪いことに気が付きました。

一つには、細かく区切って何回も繰り返す、これがダメです。
もう一つは、目で眺めて頭で音楽を鳴らす、声を出さずに言葉を発音する、これは効率がよくなかったですね。

リタイアしてから、時間はたっぷりある、はず、ですが腰が重い。
結局割いている時間はあまり変わりませんが、一念発起してやり方を変えました。
まずオーディションの二週間以上前から、部屋に籠って、しっかりした発声で楽譜をガン見して曲の最初から最後まで通す。間奏部分やソロは抜かします。ただし一日一回だけ。
もっとも今回扱う曲は先ほどもいったように合唱出ずっぱりのとんでもない大曲で、慣れないと一回通すのに一時間かかる。
ページをめくるのに慣れたら45分位まで短縮できましたが。
一日一回だけだけれど、忘れず毎日一回歌う。しっかりした声を出して歌う。

そうしたら、その前までは40回位繰り返しぶつぶつつぶやいて歌わないと覚えられなかったのですが、自然と苦痛なく覚えられたのです。
鍵は二つ。
しっかりと声を出す。これが音読に通じますね。
全体を通して歌うけど一日一回だけ。小間切れにしないで、間隔を開けるけど繰り返しの頻度を上げることになる。

合唱により、この二つの方法の有効性を実感しました。
元々、私は暗記なんて嫌いだし試験前のにわか詰め込みはできませんでした。

覚えようというよりも、なるべく興味が持続する方法を考え楽しく取り組む。
繰り返しの回数をどうやったら確保できるか。

この二点を考えると一日にやる時間は限定して区切る。その代わり毎日やる。
これが効果的でした。
覚えることが多くて大変だ、という方は是非この、部分抜けは気にせず通す、そのかわり繰り返しを確保、という視点を取り入れて、苦痛なく勉強を進めていってみてください。