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Bogleheads日本チャプター掲示板にあった質問に答えてみる(一括投資vs分割投資)

投資初心者です。教えてください。【投資信託 積立nisa】 - Bogleheads日本チャプター掲示板
一括投資か分割投資か。私なりに質問に答えてみました。

投資初心者です。
今から積立nisaをするつもりですが、仕組みが分からないので、こちらで質問させてください
例えば、余剰資金が400万あるとします。
① 1年目に積立nisa40万+課税口座で360万分購入し、40年放置
②積立nisa40万×10年購入し、初年から40年放置
③積立nisa20万×20年購入し、初年から40年放置
購入銘柄は全てオルカンで、5%固定、手数料無料で想定した場合、40年後どれが1番殖えるのでしょうか?
もしくはこれが40年ではなく20年放置だと、また違うのでしょうか?
複利の仕組みを思うと長期寝かせる事に意味があると思うのですが、積立し続けることに強みがあるとも聞きます。
教えていただければ幸いです。

という質問ですが、毎年5%ずつ基準価額が上昇すると仮定するならば、課税口座の税率次第で①が一番殖えると予想できます。
増加率が一定なら、等比数列の和の公式で求まると思いましたが、忘れちゃいましたので、エクセルでサクッと計算してみます。
計算式を記しますが、実際の計算はエクセルで求めています。

①は、積立NISA分が400,000×(1+.05)^40=2,815,995
課税口座分が3,600,000×(1+.05)^40=25,343,959 元本の3,600,000を引いた譲渡益に20,315%の税金がかかるので、
(25,343,959-3,600,000)×(1-0.20315)+3,600,000=20,926,674
2,815,995+20,926,674=23,742,669

②は、1年目400,000×(1+0.05)^40
   2年目400,000×(1+0.05)^39
   ……
   10年目400,000×(1+0.05)^31
でそれぞれ出て来た答えを足します。エクセルによれば、22,831,589

③は、1年目200,000×(1+0.05)^40
   2年目200,000×(1+0.05)^39
   ……
   20年目200,000×(1+0.05)^21
②と同様にそれぞれ出て来た答えを足します。エクセルによれば、18,424,102

当然のことながら毎年5%ずつ複利で成長していくという条件ならば、全額を一気に投資することが最も有利で、税制の制約により3,600,000円が課税口座による投資となることから40年後に譲渡益課税税率20.315%を引き去った後の金額が、毎年非課税枠を順に使うために投資への資金投入が遅くなり複利効果が減殺されることとの比較をすればよいわけです。

参考のため20年後の結果をお示しすると
① 9,404,068
② 8,604,986
③ 6,943,850
なので40年後同様、税率に複利効果が打ち勝っていますね。

さてここまでで質問へすべてお答えしたと言えそうですが、実はそうではない。

複利の仕組みを思うと長期寝かせる事に意味があると思うのですが、積立し続けることに強みがあるとも聞きます。

この質問の前段は、株価の成長率、投資信託の騰落率、最後は譲渡益となる評価益の成長率を5%と固定する仮定を置けば当然導かれる考え方ですが、問題は後段。

積立し続けることに強みがあるとも聞きます。

ここで質問者の聞きたい内容、いやむしろ聞くべき内容ですが、それは年率成長率5%固定の仮定をはずすことによって出てきます。

・長期的には株価は成長すると期待できるが、その経路は毎年5%ずつというようなきれいな直線にはならない。むしろでたらめな方向に上下する。確率は低いが、×年後(×には好きな数字を入れてください)に1年目よりも下がっていることもありうる。

・一括投資ではなく、積立し続けることによる強みは、株価の取得価額の乱高下をゆるやかにする効果と、株価の乱高下による評価益の乱高下を、積立額を少しずつ増やすことにより心理的に耐えられるようにならしていく効果と、2つの効果がある。また積立なら「これ以上の額を投資に突っ込むことは、怖くてもうできない」と思った段階で以後の積み増しをストップする選択肢も持てる。

一括投資は事前期待値*1が高いので、上の400万円が余剰資金であり全額あっさり投資に投入して、その後株価がどうなろうともイコール含み損が大きく出ようが含み益が大きく出ようが、まったく平気、取り崩しの時期がくるまで置いておけるよ、というのなら一括投資一択です。
でも事前期待値が高いだけであって、40年経った後では元本を割り込んでいる可能性は0ではない。
例として4年間で160万円投資するけれど、毎年株価が2万円ずつ下落する世界を考えてみましょう。

一括投資 投資額 株数 1株時価 評価損益
start 1,600,000 4株 400,000 0
1年後 0 4株 380,000 80,000
2年後 0 4株 360,000 160,000
3年後 0 4株 340,000 240,000

初年度スタートの1株当たり株価40万円とします。160万円一括投資なので40万円×4株=160万円となり4株保有します。
1年後になったら株価が38万円になっていました。160万円―38万円×4株=8万円の評価損が出ています。
2年後になったら株価が36万円になっていました。160万円―36万円×4株=16万円の評価損が出ています。
3年後になったら株価が34万円になっていました。160万円―34万円×4株=24万円の評価損が出ています。
株価が買った直後から下落し始めると、評価損の額がどんどん大きくなってきます。24万円/160万円=0.15。15%の下落ですから普通に振れ幅としてありそうです。4株だったら耐えられるかもしれませんが、400万円投資していたならば400万円×15%=60万円。株価は40万円に戻るかもしれないし戻らないかもしれない。未来はわかりません。その状態でじっと耐えることができるかどうか、ということです。こらえきれずに売却してしまえば損失が確定し、400万円投資して60万円の損を出して3年後に340万円の現金となって戻ってくる。
では次に160万円初年度一括投資ではなく、4年間に毎年40万円ずつ投資するけれど、毎年株価が2万円ずつ下落する世界を考えてみましょう。

分割投資 投資額 株数 1株時価 平均取得単価 評価損益
start 400,000 1株 400,000 400,000 0
1年後 400,000 1.05株 380,000 390,243 21,000
2年後 400,000 1.11株 360,000 379,746 62,400
3年後 400,000 1.17株 340,000 369515 127,800

欄が増えているので1行ずつ解説します。
スタートでは160万円ではなく40万円を投資します。1株40万円なので1株購入し1株当たり取得価額は40万円で評価損は0円。
1年後40万円を投資します。ところが1株38万円になっていますので、40万円/38万円=1.05株購入できました。スタートで1株買っていますから持株数は2.05株になりました。累計80万円投資して2.05株所持しているので80万円÷2.05株=390,243円。1株当たりの平均取得単価は390,243円に下がります。評価損は80万円―38万円×2.05株=21,000円です。
2年後みたび40万円を投資します。このときは1株36万円になっていますので、40万円/36万円=1.11株購入できました。この時点での持株数は2.05+1.11=3.16株。累積120万円投資して3.16株所持しているので120万円÷3.16株=379,746円。1株当たりの平均取得単価は379,746円に下がります。評価損は120万円―36万円×3.16株=62,400円です。
3年後40万円を投資します。1株34万円になっていますので、40万円/34万円=1.17株購入できました。この時点での持株数は3.16+1.17=4.33株。累積160万円投資して4.33株所持しているので160万円÷4.33株=369,515円。1株当たりの平均取得単価は369,515円に下がりました。評価損は160万円―34万円×4.33株=127,800円です。
残念ながら下降局面が続く限り、369,515円>34万円ですから平均取得単価が時価を下回る、つまり評価益にはなりません。
しかし株価の下落に合わせて購入株数が増え、平均取得単価が下がっている。ということは上昇局面になれば、一括投資の平均取得単価400,000円>分割投資の平均取得単価369,515円なので、評価益に浮上する地点は早くなります。

株の上昇局面ではこれとまったく反対の結果となります。
一括投資であれば1株当たりの平均取得単価は40万円で固定されていますから、ダイレクトに評価益が増えていきます。分割投資では順次買える株数が減っていき、平均取得単価は時価の上昇につれて少しずつ上がっていき、評価益は少な目になります。
分割投資をすれば、平均取得単価が株価の上下にマイルドについていき、評価益も少な目になりますが評価損もならされて少な目になります。

これは某株価データですが、1989年に一括投資していたら、2022年になっても評価損のままですね。
買ったら下落がとまらずそのまま30年……
その恐怖が嫌だという方は、迷わず分散投資にしましょう。
分散投資ならば、最初に高値を掴んでも下落局面では下落した価格で購入することになるので、下落した時価に追いつかないにせよ、平均取得単価は少しずつ下がっていき、それは先ほどの数値例で見た通りです。
その後に株価が反転して上向けば、一括投資の場合よりも平均取得価額が低いので、上向いた額が小さくても評価益が出始めるし、上昇が大きければ、一括投資よりも評価益が大きくなります。
もっとも、ずっと下落している最中であれば、一括投資だろうが積立投資だろうが、評価損に沈んでいるのは一緒なんですけれどね。(評価損の額は違いますが。)
これからの株価の動きが、上がるのか下がるのか、その方向も程度もさっぱりわかりません。騰がったと思ったら下がったり、下がったと思ったらさらに下がったりすることだってありますし。

まとめると
・一括投資
早く多額に株価の上下にさらされることで、大きな利益が期待できる。半面大きな損失も甘受しなければならない。早く配当を多く得る権利を獲得できるから、それらを再投資した場合の複利効果も大きい。
分散投資
異時点で株を取得していくので、株価の上下動の荒波を和らげることができる。半面一括投資ほど大きな利益は望めない。株価下降局面でも株の取得を続けるので上昇局面に変わった際、平均取得単価が下がっているので損失からの回復が早い可能性がある。資金投入が順次遅くなるので複利効果が少ない。

・質問から少し離れますが、生活防衛資金とか安全資産とか言われる、投資に回さない現金預金の額、実はこれも投資を続けていく上でとても大事な要素だということは言っておきたいです。400万円つっこんで評価額が200万円、100万円と下がってきたときに、預金現金で緊急時に使える別のお金を確保しておけば、泣く泣く投資信託を売らずに済むという以上に、現金預金で〇〇万円あるから評価損大丈夫耐えられる、という心理的効果はとても大きい。投資を継続してじっと株価の上昇を待つ、という気持ちを持てるのです。
この安全資産とか生活防衛資産とか言いますが、投資に回さないまとまったお金って「投資を続けていくために」必要なお金です。
一定期間ごとに一定金額を投資に投入していく方法を「ドルコスト平均法」と言いまして、一括投資の対義語として使われています。
今回は触れませんが、わたくし株価は上下するので実は複利効果はさほどないのでは?という疑いを持っておりまして、とすれば一括投資よりもドルコスト平均法は心理効果以上のものがあるかもしれません。
安全資産の確保と積立投資(=ドルコスト平均法)は、投資を続けていくための心理的バックアップとして強力な味方であることをご理解いただけるとうれしいです。

*1:過去の経験から長期的にはこれくらい儲かるよね、という確率的な数字