かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

インデックス投信 これからの課題と要望

eMAXISSlimオール・カントリーが2018.10.31に設定され、ファイナルアンサーと認知されて三年以上経過しました。私も種々検討いたしまして、“絶妙、死角なし“と結論づけましたが、最近インデックス投資信託の次なる課題も見えてまいりました。
そのうち特に二点ほどお話したいと思います。

①信託報酬率に関して、運用会社が営利法人であること

オール・カントリーを提供・運用する三菱UFJ国際投信株式会社は、株式会社であり三菱UFJ信託銀行の完全子会社です。同様にアセットマネジメントOne株式会社はみずほフィナンシャルグループ、野村、大和、三井住友の各アセットマネジメント株式会社、独立系のさわかみ投信ひふみ投信レオス・キャピタルワークスセゾン投信もみんな株式会社です。
金融グループ系であれ独立系であれ、いずれも利益追求型の株式会社です。金融庁が国内型のインデックス投信であれば、販売手数料なし(=ノーロード)、信託報酬率0.5%以下でないとつみたてNISAには、いれてやんないよ、と言っていることもあり、投資初心者を引き込む目的で信託報酬率低下競争が起きた結果、
i主要なインデックス投信の信託報酬率は劇的に下がった
ii既存の似たような投資対象の信託報酬率は高止まり
という状態になりました。
信託報酬率が劇的に下がったのは投資家的には朗報ですが、それでは運用会社は規模の経済を追及して、シェアをとって低い信託報酬率でもやっていけるようにするしかない。当然販売がある程度終わっているものは信託報酬率を下げず、販売会社である金融機関が喜ぶ販売手数料が多く取れる商品は温存しておくという、二律背反になってしまったのですね。
インデックス投資家としては、過去に購入した相対的に信託報酬率の高い商品を、同じ投資対象としている低コストファンドと合併するなり、段階的に信託報酬率を下げてもらいたいと思って声を上げていますが、運用会社側の動きは鈍い。
じゃあ、一旦売却して買い直せば、とも思いますが、キャピタルゲインが多く乗っているので株式譲渡益課税分引かれるのを投資家側は嫌がる。
運用会社の、低コストインデックス投信はシェア拡大、その一方で既存の販売ルートなり販売が一段落した古い投信で利益をあげよう、という言い分もわからないではない。
ニッセイみたいに頑張って下げてきたところもありますけどね。
ここからが私の提案になります。
運用会社が利益追求型の株式会社組織だからそうなっちゃうのはしかたがない。だったら運用会社が“利益を追求しない”“利益追求は組織存続に必要な最小限にとどめる”法人形態をとればいいのではないか。形としては三つ考えられます。
i米国ヴァンガード社のように、信託財産が株を保有する形態をとる。
つまり投資信託を購入している投資家が同時に株主になる形です。そうするとやはりその運用会社は株式市場に上場していることが望ましいですね。株主は投資家ですから、ステークホルダーとして投資家の利益を第一に考える。そうすると運用資産の拡大と存続のために必要な支出に抑える運動が組み込まれる。ただし“存続のために“必要な支出なので運用財産が規模縮小してきたら信託報酬率は上がることだってある。また小口所有者からは管理手数料を取ることも必要かもしれない。
ii協同組合にする
協同組合にして出資金を出した人だけが投信を買える形態です。これも投資家イコール出資者で、出資者の利益のために行動することになるからコストが下がって利益が増えてきたら信託報酬率を下げたり、出資分量配当や事業分量配当で還元することもできます。
iii非営利法人にする
営利を目的としない法人形態をとる。必要な費用を引き去って持続のための剰余金は最小限にする。
引き下げ競争が行きつく先、0.1%を割り込む信託報酬率の段階に入ってきましたから、あとはパイを大きくする(=新規投資家が増える)ことぐらいしかできることがない。もっとも米国の投資信託の純資産規模を見る限り、2000万円問題炎上などを経てつみたてNISAも認知が進んできましたから、まだまだ開拓余地のある分野だと思います。

②指数の使用料が高い

インデックス投信の利用する、又はベンチマークとする指数は、FTSEとかMSCI-KOKUSAIとかS&P500とかTOPIXとかありますが、外国株式向けのやつはほとんどアメリカ製。運用報告書を見ても個別の投資信託のマザーファンド*1がいったい指数仕様手数料をいくら払っているのかわかりませんが、米国MSCI社なんぞは2017.12売上高1,274から2021.12売上高2,043(単位百万ドル)と結構な金額と伸び。
そこへ打って出たのがSOMPO123ですね。先進国株式であれば、MSCIやFTSEといった指数を使うのではなく、それを参考に123銘柄程度に絞った。指数使用料を払わないからその分コストを抑えて信託報酬率を引き下げることができる。また時価総額加重平均といった指数をなぞるためには、0.00パーセント以下の少額株も保有したり、割合の変動に応じて機敏に株を売買しなければならない。そのコストも馬鹿にならない。
だったら既存の指数の騰落率を参考に、その大本に近い123銘柄で勝負しちゃえ。ってやつですね。信託報酬率は0.077%と最安圏を実現しています。純資産総額は2022.11.30現在で16.66億円と少ない*2ですが。
指数にはもう一つ問題があって、山崎元・水瀬ケンイチ著 朝日新書「全面改訂 第3版 ほったらかし投資術」P122~P123で指摘している通り、指数採用銘柄の入れ替えは事前公表が必要なので、公表直後に、はずれる銘柄を先物で売って、新規採用される銘柄を先物で買うと、世界各地のインデックス投信がはずれた銘柄を売るころには値が必要以上に下がり、新規採用銘柄は逆に必要以上に値が上がる。つまり先物取引でさやを抜かれて、そのさやの分の損をインデックス投資家が負担する、ということが起こるのです。
そのためには自前の指数でインデックスを作成して、銘柄の入れ替えを実際に行った後に発表すれば、あからさまな弊害は排除できます。売り圧力や買い圧力を察知されることはあるかもしれませんが。
もっとも123銘柄で十分分散されているといえるかどうかは、議論が分かれる所ですが、指数を参考に自前の選定を行うというアクティブファンドでありながら、インデックス的という商品を実現したことは、また一歩先に踏み出した重要な意義があると私は思っています。

今回は2点ほど「インデックス投信、もっとこうなってほしい」願望を上げました。開示方法や貸株、受取配当金再投資タイミングなど、色々言いたいことを従来から少しずつ申し上げてきましたが、書いてみてどうにもマニアックだなと感じる場合もあります。
しかしながら一インデックス投資家として例え重箱の隅をつつこうとも大事だな、譲れないと思った主張は、できるだけ“よりわかりやすく”を旗印に思う所を開陳していきたいと思います。

*1:投資信託はファミリーファンド方式と言って、個々の販売された投信が直接株式や債券を買い付けるのではなく、目的別、例えば国内株式、先進国株式、新興国株式といった市場別のマザーファンドを作ってそちらで株式を所有し、個々の投信商品はマザーファンドの受益証券を持つ形をとることが多いです。

*2:個人的には30億で繰上償還なし、百億で存続安泰という目安です。