かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

長寿アクティブファンドの横顔

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上の記事から40年以上続いている(アクティブ)ファンドがあるということで、そんなに長く続いているなら、文学の古典と同じく、時の淘汰に耐えただけの存在価値があるのかもしれないと思い、目論見書などから現在の状態を概観します。
1.大型株ファンド
設定日:1961.12.2
ベンチマーク:なし
購入時手数料:上限2.2%
売却時手数料:なし、但し1979.12.28以前申込の場合は1口当たり22円
信託報酬:0.792%
純資産総額:14億2,900万円
設定来騰落率:2901.5%(2022.7.29現在)
これだけでは数字の意味がわからないので、S&P500のほぼ同期間の騰落率と比べてみます。

1961.12.1 71.78
1961.12.4 72.01
2022.7.29 4130.29

1961.12.1-2022.7.29の騰落率5754.1%
2901.5%÷5754.1%=0.5042。ほぼS&P500の半分でした。もっとも指数そのものと比べると、投資信託は信託報酬をはじめとする経費を引き去った残りにならざるを得ませんから、目標比較数値(=ベンチマーク)として有用であるものの、それと同じ程度までの上昇を期待できるわけではありません。
年平均騰落率を計算してみます。年平均騰落率をrとおくと
スタート:元本1
一年後:1×(1+r)
二年後:1×(1+r)×(1+r)
三年後:1×(1+r)×(1+r)×(1+r)
……
61年後:1×(1+r)×(1+r)×(1+r)……(1+r) n年後では(1+r)をn回掛けますから
61年後:1×(1+r)^61 です。この結果が2901.5になったのですから、
1×(1+r)^61=2901.5 これをrについてexcelの関数で解くと
2901.5^(1/61)=1.1396 と年平均騰落率、この場合は値上がり率が求められます。
年利13.96%ということで、なかなか良いではないでしょうか。
もっともS&P500で同様に計算しますと、
5754.1^(1/61)=1.1524 なので年利15.25%相当なので、年間1.28%劣後しています。あくまで年平均劣後額なので、複利計算で、61年間という長期を経ると、結果は倍近い差をつけられてしまったということです。
もう一つ、信託報酬率がどの程度複利効果を減殺しているか計算してみましょう。
平均騰落率13.96%が信託報酬率0.792%引いたあとですから、これを足し直して61年分複利計算すれば、信託報酬率0の時いくらになったかわかります。
1×(1+0.1396+0.00792)^61=4419.53
結構いい数字になりましたが、信託報酬率0では運用会社はやっていられません。そこで最近の低コストインデックスファンドの0.2%に設定してみますと、
1×(1+0.1396+0.00792-0.002)^61=3973.41
最初1万円一括投資したとすると、3973万4100円。
大型株ファンドだと2901万5000円なので、その差額は1071万円ほど。
当時は信託報酬率0.2%なんて投資信託はなかったでしょうし、当時の1万円を一括投資して62年間ほっておくことが出来る人がそうそういるとは思いませんが、長期に信託報酬率の差が及ぼす影響がよくわかります。

信託報酬は、純資産総額が追加入金ない条件で上がっても下がっても、つまり保有有価証券の時価が上がろうが下がろうが約款に定めた通りの率で差し引かれていきます。儲けがあった分だけに成功報酬でかかるのではなく、財産の管理料、維持費として財産額総額に対してかかってくる費用なのです。
純資産総額14億という低迷ぶりからすると、文学でいう古典には昇格できなかったもよう。新規に購入するようなファンドではありません。

目論見書の繰り上げ償還条件の一つに、
受益権の口数が300万口を下ることとなった場合
とありますが、
2022年1月11日の運用報告書を見ると、
受益権総口数1, 291, 588口
で、とっくに繰上償還されていてもおかしくありませんが、毎期分配金を出して継続しているところは偉いと思います。

1961年12月に1万円大型株ファンドに投資してずっとほったらかしていると、2022年7月には2901万5千円になっていた。騰落率2901.5%はそういうことですが、
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je12/h10_data05.html
長期経済統計のページで消費者物価指数を見てみますと、

1961年 20.1
2010年 100

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2022年7月は2020年基準で102.3。
https://ecodb.net/country/JP/imf_cpi.html
2010年を94.83とすると2020年は99.99。これで0.01を無視して2010年と2020年を接続してみますと。

1961年 20.1 -
2010年 100 94.83
2020年 - 99.99≒100
2022年 - 102.3

100:94.83=20.1:X これを解くと94.83×20.1÷100=19.06

1961年 19.06
2022年 102.3

102.3÷19.06=5.36。物価は5.36倍になって、つまり貨幣価値は5.36分の1になっていますから、
2901.5÷5.36=541。1961年に1万円投資して得た、実質購買力は2022年現在541万円。
実質価値でも541倍です。61年もの間ずっとほったらかせるかというと、途中で換金、途中で本人死亡、色々ありそうですし、たまたまこの期間でみたからよかった部分もあるでしょう。日本のバブル崩壊後の失われた30年間は株価が戻りませんでしたから。それでも長期投資の力は実感できますね。