たわら男爵の2021.11.22ブログに、とても興味深い記事が紹介されています。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-2307.html
投信ブロガー河童さんのツイートと記事の中で
SBI・V・S&P500は運用報告書記載の総経費率は安いが、トータルコストではeMAXSISilim米国株式(S&P500)に負けているという内容です。
https://secrets2mysuccess.net/hard_to_keep_cost_low/
SBI・V・S&P500の運用報告書から計算した運用コストは、税込み0.1048%と驚異的な安さです。が、ごまかしの効かない基準価額データが示す実際の運用コストは、スリム米国株式(S&P500)より高いです。
これは運用報告書には全てのコストが記載されないという、現行制度の制約に起因しています。
そのため、評価としてはこうなります。「運用報告書から計算した運用コストは驚異的な安さですが、あらゆるコストが反映された基準価額データはスリム米国株式(S&P500)より高いことを示しています。」運用報告書の記載方法は別にしても、SBI・V・S&P500は運用コストの削減を頑張って欲しいです。
と結論を述べています。
ここからは私の計算と意見です。計算方法は河童さんとは違います。一次データから自分の評価尺度で計算してみます。
まずは総経費率の計算。直近の交付運用報告書である、スリム米国株の2021.4.26、SBI・Vの2021.9.14の、一万口当たりの費用明細と交付目論見書から信託報酬率を持ってきて計算します。
スリム米国株 | SBI・V | |
信託報酬 | 0.098→0.0968 | 0.064→0.0638 |
売買委託手数料 | 0.007 | 0 |
有価証券取引税 | 0 | 0 |
その他費用 | 0.019 | 0.011 |
合計 | 0.124→0.1228 | 0.075→0.0748 |
投資先ファンド | なし | 0.03 |
総経費率 | 0.1228 | 0.1048 |
一万口当たりの費用明細は、各項目共、小数点第3位未満四捨五入したものなので、信託報酬率は交付目論見書の数字に置き換え、合計は四捨五入した後の数字を単純に足しただけなので、置き換え後の信託報酬率に各項目の数字を加えました。
SBI・Vは投資先ファンドのVOOを買うだけファンドなので、VOOの総経費率0.03%を加えて総経費率を計算します。
騰落率は、スリム米国株の信託報酬が、0.165%から0.0968%に変更適用された2019.11.12から2021.11.24までの期間で計算しました。両社とも設定来分配金0円であることは、交付目論見書から確認済です。
スリム米国株 | SBI・V | |
20191112 | 11,413 | 10,502 |
20211122 | 18,652 | 17,099 |
騰落率 | 0.634276702 | 0.628166064 |
年換算〃 | 0.312430494 | 0.309420531 |
SBI・Vは総経費率で0.1228-0.1048=0.018勝っていますが、基準価額の年換算騰落率(365日/741日)では、0.00301負けています。
河童さんは、「ごまかしの効かない基準価額データが示す実際の運用コスト」とおっしゃっていますが、私は売買委託手数料・有価証券取引税・その他の費用は、隠れコストではなく事後的に運用報告書で開示されているコストであり、基準価額騰落率の差異は、たわら男爵がおっしゃるように配当確定日に株式先物を使って配当入金日までの期間の株式投資比率を高めるオペレーションの差によるものではないかと考えます。確かにSBI・Vは、ヴァンガード社のVOOを買うだけファンドのため、VOOのS&P500との基準価額の乖離の影響は受けますが、VOOの規模からすると想定しにくいように思います。
以前私は、インデックスファンドが貸株により投資効率を高めて投資家50%運用会社50%の利益を得るのを邪道だと批判しましたが、余計なオペレーションでミスを誘発したり、今は競争で低くなっている信託報酬率を「収益を高める工夫をしていますから値上げします」という口実に使われそうな気がするので、何もそこまでやらんでもと思います。
もちろん、純資産総額が大きくなると、ちょっとしたオペレーションによる影響は大きいし、解約と新規購入のバランスをとって信託財産の保有する有価証券を売り買いするコストをコール・ローンなどを使って最小にしようとする努力を否定するものではありません。
低コストインデックスファンドの純資産総額が大きくなってくると、このようなオペレーションの哲学に対する価値観の違いがどこまで投資家の行動に影響を及ぼすのかわかりませんが興味深いお話でした。
今回のお二人の記事を読んで、今までは事後的に計算できる総経費率にかなりの重点を置いておりましたが、基準価額の騰落率には、最終的な手残りという意味で、運用会社のオペレーションの最終結果が表れているから、そちらも同様に重点を置いて見ていく必要があることは、よくわかりました。お二人に感謝です。