かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

寒さを防ぐ服装ーエスキモーに学ぶ

防寒の仕方について、手首、足首、首筋を抑えるということは分かっていましたので、手首足首はリブありで隙間風を防ぎ、手袋をする。首筋はネックウォーマーをする。ここまではオーケーでした。
といっても先週まで、ネックウォーマーをしないで、耳がすっぽり隠れる毛糸の帽子をして大丈夫なつもりでいたのですが、耳は温かくとも寒さが首から忍び込んでいるらしく、しかもマスクの紐を耳に掛けているから帽子を長時間被っていると頭が痛くなる。
そこでネックウォーマーをして帽子を止めた所、耳はそれほど冷たくならず、帽子有ネックウォーマー無しよりも体が冷えないことに気づきました。

本田勝一著「本田勝一集9 極限の民族」朝日新聞社 を読んでいます。

最初に出てくるエスキモーの服が、
・アティギーカリブーの毛皮を主婦が噛んでなめし、毛を内側にしてカリブーの腱の糸で縫ったもの。
・アノガジェー同じくカリブーの毛皮と腱で作るが、毛を外側にしている。
・ズボンと手袋―同じくカリブーの毛皮で作る。

基本上下一枚ずつ。厳寒期や猛吹雪のとき、またアザラシ穴で何時間も出てくるのを待つ時は、アティギの上にアノガジェを着る。
子供の服は頭から足までつながっていて、お尻の部分だけ穴があいているが、普段はふさがっているから凍傷の心配はない。大人も子供も下着などなし。
重ね着をする私たちとまるで違いますね。
どういうことか。
まずカリブーの毛皮を断熱材としていること、そして暖かい空気ほど比重が軽いことを利用しているのです。着ぶくれすると空気の層がないうえ、汗をかいても蒸発しにくいから冷えやすい。アティギは厚い毛皮一枚がふわりと体を覆うだけ。裾は空いているが暖かい空気は下に逃げない。上はフード(頭巾)でぴったりふさがれている。暖か過ぎたらフードをはずすだけで首の周りから暖気が逃げてゆく。しかも一枚服なので活動的である。

足元はどうか。

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同書26ページの図

カリブーの毛皮(内側毛)→大型毛織靴下→カリブーの毛皮(外側毛)→小型アザラシの皮→大型アザラシの皮→大型アザラシ又は白熊の毛皮
4枚履いて、2枚底がある。
毛皮を内側にして防寒、外側にして防水なんですね。山登りはできないけど、カナダの北極圏はほとんど平、しかも氷に覆われた陸と海の境目がないから問題なし。

寒くなったら重ね着とずっと思っていましたし、手首足首首筋から熱が逃げていくことは分かっていましたが、一番上の首筋が最重要だということ。エスキモーは断熱服1枚で汗で体を冷やさない、というところが驚きでした。

ほかにも、
・人間の直腸温度の臨界点は27度。これを下回ると体温を保ったままの新陳代謝が出来なくなる。雨に濡れた登山者が夏山で零下にならなくても凍死するのはこれが原因。
・夏でも海水温は零下2度か3度。流氷の間に落ちれば引き上げてもまず命はない。もっともエスキモーは泳げない。
エスキモーの雪洞式テント住宅の内部はセ氏14度から23度。始終燃えている海獣の脂肪ランプ兼暖房兼炊事用の火と人いきれで住宅内は暖かい。日本の関東や東北地方の家の中は、シベリア、中国北部、ヒマラヤ、北極の家より寒いのだ。日本家屋と同じくらい室内が寒いのはオンドルのない北限である中国南京市近辺。
エスキモー伝統のあやとり。あやとり?
キリスト教が普及していること。
・夏は午前4時ごろやっと寝始める。毛皮の寝具に大人も子供もすっ裸で潜り込んで、熱ければふとんをはいでしまう。
などなど。しかしこれは1963年の話ですから、その後カナダ政府の政策により基地周辺に集住が進められプレハブ住宅が建てられて狩猟採集民族としての姿は相当に変容したとのこと。飲酒の習慣を覚え基地完成後失業して生活保護で酒浸りという人たちもいるそうです。逆にカナダ人神父の働きかけで白人もエスキモーも立ち直って狩猟や漁業に精出している地域もあるとのことです。