かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

八高線事故と福知山線事故

ニュース映画に見る終戦直後の鉄道事情を見ました。https://www.youtube.com/watch?v=OpyDVbfdf_I
被災した機関車達のほとんどを廃車にせず、修理して使ったとのこと。復員、開拓民の帰国、買い出し、農産物輸送とフル活動を強いられる中で、資材がヤミに流れ、補修がおいつかず、あちこちで事故が起きます。
私が注目したのは、八高線事故。一回目は1945年8月24日午前7時40分ごろ、小宮-拝島間で起こりました。多摩川鉄橋上で上下線の列車が正面衝突、少なくとも105名が亡くなりました。
原因は、単線で閉塞通標ではなく、駅同士、電話連絡で運行していたところ、前夜からの雷雨による通信線不具合と両駅員の連絡不足とされています。
二回目は、1947年2月25日午前7時50分、東飯能-高麗川間において、超満員の列車が急カーブで2、3両目の連結器が外れ脱線、4両目から6両目が高さ5メートル下の桑畑に転落、少なくとも184人が死亡しました。
検察の事故調査委員会により、買い出しや客で定員の3倍もの乗客を乗せ、予定時刻を遅れて東飯能駅を出発、速度制限毎時55キロメートル以下とされている急カーブに速度超過で進入、急ブレーキをかけたため連結器が外れたもの、とされました。
八高線事故については、小学生か中学生の頃、鉄道の図鑑か何かで読んでいた記憶がありましたが、どちらの事故の話だったか記憶がごっちゃになっています。たしか、女子高校生が通学で友達が迎えに来たけど、お腹が痛くて先に行ってもらって、自分は収まってから駅にいったら大変なことになっていた、友達は亡くなったというエピソードが語られていました。
素人である検察の事故調なんて信用できないですね。後者の事故も結局運転手のせいにされて幕引きらしいです。
実は、その裏に、「超過スピードで急カーブに進入せざるを得なかった」事情があって、それをしっかり見極めて潰さないと、事故は無くなりません。だって、「ぐへへへ、スピード出して急カーブ曲がったら気持ちいいだろうな」と思って機関車を運転しているわけないですもん。むしろ「ああ、予定時刻過ぎて東飯能でちゃったから、少しでもスピード上げて取り戻そう」という真面目な態度での焦りがあったのだと思います。
素人考えでは、
・乗員保守作業員の疲労
・線路の摩耗
・カーブ線路の保守不十分、犬釘が緩んでいるとか、外側線路の補強不足
・そもそも当時は、定員超過はあたりまえで、定員の3倍を押し込めるのに相当時間がかかった
・機関車の速度計が壊れているものが多く、運転手の勘に頼ることが多かった。
・定時運行原理主義の強要
こんなことが思い浮かびます。

さて、「急カーブに速度超過で進入」と聞いて何か思い当たりませんか。
そうです、福知山線脱線事故。2005年4月25日午前9時18分ごろ、塚口-尼崎間で起こりました。107人が死亡しています。(以下、出典はWikipedia
事故調査委員会によると、事故直前の伊丹駅での72 mのオーバーランの後、車掌にオーバーランの距離を少なく報告するように車内電話で要請したこと、その後、車掌と指令員の交信に気を取られ、ブレーキ操作が大幅に遅れ、充分減速できないまま現場カーブに進入し、脱線したとしています。
その背景には、JR西日本日勤教育というとんでもない懲罰があります。事故の当該運転士も、過去に運転ミスや苦情などで3回の日勤教育を受け、知人や友人に「一日中文章を書いていなければならず、トイレに行くにも上の人に断らなければならないので嫌だ」「日勤教育は社訓みたいなものを丸写しするだけで、こういう事をする意味が分からない」「給料がカットされ、本当に嫌だ」「降ろされたらどうしよう」と話していたそうです。管理者が集団で毎日のように恫喝や罵声を浴びせ続けて自殺や鬱に追い込んだ事例もあります。

そのほかにもJR西日本のしょうもなさが露になりました。
・列車に乗り合わせていたJR西日本の社員2名は、上司からの出勤命令により救助活動せずに出勤し、人命軽視体質を報道される。
JR西日本付属の大阪鉄道病院は、事故現場から遠いとの理由で、患者受け入れ要請を拒否。そこより遠い病院が受け入れていることを指摘されると、救急指定病院ではないと理由を変えて拒否。
JR西日本は記者会見の中で粉砕痕置石を踏んだ跡)の写真を報道機関に示すなどして、置石による事故であることを示唆した。国土交通省が断定を否定する発言により、撤回。

また、物理的、システム的な問題も指摘されています。
現場は、その後2005年6月から2010年10月までの間に速度超過で列車が緊急停止する事態が11件も起こっている。塚口からこのカーブまではほぼ一直線。速度の出やすい魔のカーブと呼ばれています。
・私鉄各社との競争激化、赤字ローカル線多数、阪神淡路大震災で被害を受けていたことや山陽新幹線コンクリート崩落問題で多額出費を強いられる。スピードアップによる所要時間短縮、運転本数増加など目先の利益を優先し、安全対策が後手に回った。
・秒単位の定時運行を目標に掲げていた。特に尼崎駅は乗り継ぎダイヤを組んでいたためサービス上の絶対条件であったこと。
120km運転、停車時間15秒、快速停車駅を追加したのにダイヤ上所要時間を変更しなかったため余裕時分が削られ慢性的な遅延が出て問題視されていたこと。特に事故列車は最速ダイヤの列車で2004年10月のダイヤ改正でさらに時間が短縮されていたこと。
・当時のJR西日本は施策で「余裕時分全廃」を掲げていたこと。事故調査委員会が全国のJR・私鉄・公営鉄道事業者のダイヤを調べたところ、余裕時分のないダイヤを組んでいたのはJR西日本だけであったこと。
福知山線JR東西線との直通運転を開始するにあたり、尼崎での線路を付け替え、新ルートでは曲線半径が小さくなったこと。
・運転士は運転歴11か月、運転技術や勤務姿勢が未熟だった可能性がある。他のJR各社と比べ長期間にわたって新規採用を絞り、定年退職者がまとまって出た段階で採用を増やしたため、年齢構成に偏りがでて運転技術を教えるベテランが少なかったことが指摘されています。
・また電車が激突したマンションは、付け替えられた旧線跡地を利用して建てられたもので、線路からの距離は6mに満たなかったそうです。
線路際のマンション、特にカーブ外側に建っているものは住むのを避けたいですね。

運転士のスピード出しすぎが原因、で片づけられちゃった八高線事故に比べると、福知山線事故は、事故調査委員会やマスコミによって、運転士の行動の背景を事故原因に結び付けられただけ、人類は少しだけ進歩したのでしょう。

大事故って、偶然が重なって起こるっていうけど、偶然なんかじゃありません、小さいほころびが不運にも集まって起こるものです。しくみ上の問題を、現場の超人的な職人技に頼ってなんとかしている、その状態を放置すれば必ずこういう問題が起きます。
以前ドイツの特急で脱線事故が起きた時も、原因は車輪の目に見えない傷だったとされたと思います。どんなハイテクだろうが機械化だろうが、最終的には人の手にかかっている。その人の手が疲労せずに余裕を以って伸ばされるようにしておかなければならない。人は機械じゃないですから。

だから「やれやれ」ばっかり言う無能な上司は滅びろってことかな。