かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

アマゾンレビューが炎上、大東京ビンボー生活マニュアル

私の愛蔵本です。本棚を断捨離するため漫画本は全部処分対象ですが、これはボロボロなのでメルカリに出して売れるとも思えず、捨てるしかないのですが、どうしても捨てられません。
今でも売っているのかなーと思ったら、kindle版、中古は文庫版で、コミック版はとんでもないプレミアがついていました。
そしてレビューは大荒れ。ふざけんなの嵐。
なぜなのか考えてみました。

一つはこの作品が生み出された時代背景にあります。第一巻1987年2月~第五巻1989年11月の間に出版されましたが、バブル前期から絶頂期です。高級車、ディスコ、ボディコン、不動産爆上げ、ボーナス沢山出て、24時間働けますかと栄養ドリンクのCMが流れ、拝金主義全盛時代。主人公のコースケは貧乏アパート住まいで、定職にもつかず、必要最低限のアルバイト、後は文学や音楽、びんぼー飯を楽しむ。時代へのアンチテーゼだったのですね。
今のリーンFIRE*1に似た生活をしていますが、主人公のコースケは人間のタイプ的に少々違う。まず周囲の好意を平然と受け止める。彼女もいる。近所の人も大家もみんな優しい。本人には何の取り柄もないのに自然と人との優しい関係、しかもほぼ一方的にギブ=アンド=ギブされる関係。このへんが“ムカつく”とされる原因なのでしょう。
今は、個人がますますタコつぼ化して、好意を受けたら返さないといけないという脅迫観念にとらわれそうだし、他人と自然と絡むなんてリアリティがなさすぎ、ファンタジーとして消費するには白けてしまう。
当時の漫画は、“何の取り柄もない主人公なのに、かわいい彼女が寄ってくる、別の小悪魔的な女がなぜか好意を寄せてくる、生活のちょっとしたつまづきで気持ちが曇っても、なぜかうまいこと円満解決”というご都合主義路線の作品が沢山出ていました。それを青年漫画のファンタジーとしてみな喜んで消費していたのです。

舞台装置もビンボーアパートで、もうないし、時代の変遷でもう感情移入は無理なのでしょう。
それが証拠に好意的なコメントを寄せている人は、1980年代から1990年代を青年時代として過ごした人ばかりですから。

定期券の貸し借り、勝手に自転車を借りて返しておく、夜の学校のプールに忍び込んで泳ぐ、これらを「犯罪だ」と言って怒っている人がいますが、あの時代は、そうした行為はごく自然に受け止められていて、法律違反、規則違反ではあるけど、悪いことの範囲に入っていませんでした。
40キロ制限の道路で、車の流れに乗るために60キロで走らせるような程度の受け止め方です。
そうそう、ヒロポンという商品名で第二次世界大戦前から合法的に流通していた覚醒剤は、戦争中に軍部が使用を推奨、疲労回復材として広まり、安価なこともあって戦後燎原の火事のごとく広まって1951年の取り締まり開始後も結構使用されていたという。時代によって善悪の判断は変わってしまうという例は沢山あります。

未だに愛蔵している私としては、アーリーリタイアの参考本になるかな、と思って紹介したいのですが、同時代を生きてノスタルジックに浸れる人でない、現実のアーリーリタイアを目指す若者、目論む若者には、ファンタジーにもならず、“ふざけんな本”という受け止め方になってしまうのが残念ですが、しょうがないですね。


*1:生活費を思いきり切り詰めて、少ない資産で隠居生活に入ること