かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

森博嗣「お金の減らし方」SB新書508 SBクリエイティブ株式会社

「僕はお金の増やし方をしらない」冒頭からこれですよ。
大学の助手になって残業手当もつかないのに一日十六時間、土日も大学に入り浸って研究。子供の小学校にはいったことすらない。これだけ見れば立派な昭和のモーレツおやじですね。鉄道模型の線路を庭に引きたい、という希望を胸に、何か効率のよいバイトはないかと考え、睡眠時間を半分削ってワープロで小説を書く。それを懸賞に応募したところ「出版しませんか」と電話が来て、あとは書くもの書くものみな本になり、あれよあれよという間もなく印税だけで大学の給料の十倍。これだけみると、シンデレラストーリーでしかないでしょ、と思いますよね。
成功の原因は少なくとも二つあります。
まず一作目は練習のつもりだったから、応募後二作目にとりかかりほぼ完成していたころに出版社から電話があった。これ書くことに適性がすごくあったということですね。
もう一つは、構想自体は十作品位用意できていたというところ。これは十分な作品を生み出す力がある、プロとしてやっていける資質ですよね。
森さんの愛読者である私の配偶者によると、この方の推理小説は“理系だなー”と思うトリックなのだそうです。とすると、本業にものすごくのめり込んだ知見を応用する術を知っているということですね。これ、おいそれと真似できないように見えて、実は重要な示唆が含まれています。
この後も、森さんは模型飛行機がすごく好きで、本業は流体力学の解析。そう、人が載る航空機自体はご存じなくても、飛行機の動きに関しては、常人とはかけ離れたマニアの視点、リアルな視点をお持ちだということ。出版社から「飛行機に関する小説を書いてほしい」と依頼が来て、「こんなマニアックな小説誰が読むんだろう」と思っていたところ、売れませんでしたと。
だけど、思っていたよりは売れて、その後シリーズ6冊になったと。十分売れてるじゃないですか。
そのシリーズが、押井守監督のもと、アニメ映画の原作となって、印税が二十億円。併せて本も売れた。
まあ、これもシンデレラストーリーではあります。ですが、自分が好きでのめり込んでいる知見を応用する、という点は参考になりませんか。
ご本人は投資なんかしたことはないし、お金は自分が欲しい物を買うための仮の存在なんだから、本業やバイトでお金を手に入れるのが一番効率がよい、という考え方をお持ちです。王道ですね。
ですからお金は銀行に預けているだけのようです。しかし、利子のつかない口座に入れ、一千万円を超えても全額預金保険で保護されるようにしているそうです。ちゃんと調べていますね。
助手の貧乏時代から、収入は家族のもの。一割は自分、一割は奥様が「欲しいもの」に使う。残りの8割で生活する、というポリシーで結婚生活をスタート。収入の一割は自動的に預金に、残りの9割で生活する、という本多静六さんと似ていますが、あらかじめ別にしたお金を「欲しいもの」に使う、という点が目新しい。
みんな、自分の欲しい物じゃなくて、人にうらやましがられるためにお金を使っている、自分の欲望がわからなくなっているんじゃないですか、との問題提起がなされます。
「偉そうな人は偉くない」「人によく見られて、何か得がある?」「仕事とは嫌な思いをお金に交換する」「目先の楽しさを求めると虚しくなる/あなたの未来のためにお金を使う」「本当の趣味人は人をさそわない」「自分が何に向いているかは案外自覚できない」
ほら、セミリタイア、リタイア界隈の関心事に近くなってきていますよ。
もっと、誰にでも適用できそうな生き方論や幸福論になってきています。まね出来そうにないようで、まねできそうな、実際にやっていそうな考え方のヒントがいっぱいです。

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