かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

連合赤軍と帝国陸軍の類似

連合赤軍が1972年2月に起こしたあさま山荘事件が50周年を迎えます。
下の参考図書に上げましたが、深笛義也「2022年の連合赤軍-50年後に語られた「それぞれの真実」-」を読みました。まず事件へ至るまでの背景が語られ、その後の章で生き残りで刑期を終えて出獄、それぞれの暮らしをしている人にインタビューして各人の行動を追っています。芥川龍之介「藪の中」に倣って、各人から見た、あさま山荘事件までを多角的に追っているのがよい。思い込みや記憶違いもあることを見越して、また事実の評価の仕方や細かい事実のすくい上げにも成功しています。一読の価値があります。
事件の起こるまでの背景は本文にわかりやすく時間の経過を追って書いてありますが、私がものすっごくざっくり書いちゃうとこういうことです。
1960年日米安保条約締結反対で国会を取り巻いたけど、結局条約は締結され、デモ隊に参加した人たちは挫折感を味わった。するとその後は3つに分かれる。
1政治の季節はもう終わりだ、就職して勤めて市民生活を大事にしよう(大多数。)
2今回はうまくいかなかったけど政党や下部政治圧力団体で訴えを続けよう(少数。)
3今回うまくいかなかったから、世界同時革命を目指して武装テロだ(革マル派中核派、革命左派、赤軍派など、極少数。)
それで3の人たちのうち、革命左派と赤軍派が合体して連合赤軍となる。銃砲店を襲って銃と弾を手に入れ、銀行強盗で資金を手に入れ、指名手配されたので山にこもって軍事訓練。そのうちに、自己批判しろと仲間内で粛清をはじめ、最初逃亡した者のうち2名を殺害、次に山にいるメンバー達のうち12名を殺害、最後は軽井沢のレイクニュータウンで別荘の管理人を人質に立てこもり。銃撃戦で民間人1人機動隊員2人死亡。一週間後に突入して全員逮捕された、という事件です。
詳しくは参考図書↓を読んでいただくとして、ここで私が着目したのは、大日本帝国陸軍連合赤軍の類似性です。
・指導者層と一般兵士に分かれている。
・指導者層は方針決定・命令する立場、一般兵士は疑問をいだくことを許されず従う立場。陸軍の場合は鉄拳制裁で、連合赤軍は最初は一般兵士が勝手に動く部分もありましたが山に籠ってからは指導者層の言葉と時に屁理屈込みの論理により完全に命令をされ動く立場となる。
・陸軍では兵士は「天皇陛下の赤子、大事にすべき」とお題目を唱えられながら、餓死・病死・責任取って自爆死させられた。連合赤軍で一般兵士は、いいがかかりで自己批判しろと言われ緊縛され厳寒の下屋外に縛られ殴られ死に追いやられた。指導者層は自己批判の矛先にならなかったが最後の方では指導者層の末端は自己批判させられ死においやられている。
他にも、テレビ中継されて機動隊がカップヌードルを食べていた姿が移ってカップヌードルが売れたとか、立てこもった別荘が河合楽器所有だったので後でピアノが売れたとか、小ネタがありますが、私が今回この本を読んであっと思ったことがひとつ。
以前栄養学者の川島四郎さんが「インスタント食品ばかり食べていたから、気が立ってヒステリーになったんじゃないか」と以前おっしゃっていたこと。もちろんカップヌードルは1971年9月発売なのでぎりぎり間に合ったかもしれませんし、食事の話はあまりでてこないので確証は掴めませんが、袋めんのインスタントは食べていた可能性があります。だけどお金を切り詰めていて「米ではなくて麦を大量に購入していたので怪しまれた」「そこらへんにある野草を摘んで雑炊にしていた」とあり、米麦半々の食事をしていた記述があることから栄養は多少気にしていたのではないか、ということが個人的な注目点です。
指導者層が迷走して、それを糊塗するために被支配層を虐待する。
とすると、ブラック企業もまったく同じ轍を踏みそうですね。
日本以外にこのような例があるのか、寡聞にして知らないのですが、オウム真理教も同じ運命に導かれている気がするし、では宗教でとみると1978年11月、ガイアナ人民寺院事件で集団で自殺者を出した例があります。
私が思うに、自由が苦しく感じる時があるわけで。なんでも自分で決めるのはともかく、その結果を他の誰にも責任転嫁できない、全部自分が引き受けなければならないから。
それを全部他の指導者や導師といった人に預けてしまえば、心理的には楽になる。たとえ行動して同じ結果だったとしても、自分は命令されてやったからこうなった。という心理的な安堵感がある。これ古典的な自由命題ってやつですよね。
組織にいると組織の論理で「やりたくないなぁ」と思ったことでもやらなくちゃならない。時にそれが自分を大きく成長させてくれることがある。失敗しても自分一人で受け止めなくて良い。しかし場合によっては、今度は組織の論理(屁理屈)によってトカゲのしっぽ切りならぬ責任をおっかぶらされて追い出されたりすることもあります。
読んでいると、最初の頃、一般兵士が指導者層の方針を独自解釈して自由な判断で動いていたことのいくつかはうまくいった。組織は現場でしか臨機応変に判断できない場面も多いので、上層部が細かい一挙手一投足まで口を出し始めると、現実から遊離してきて絶対うまくいきません。現場の判断する力をそいでしまうと判断力が育たない。もちろん現場は現状に縛られた思考しかできない部分もあるから大きな枠組みと向かうべき方向を指し示すのは上層部の責務ではあります。
最後は組織論みたいになっちゃいましたが、立場の違いを超え、お互い言うことを言い合って沢山の知恵を出し合っていかないと集団はとんでもない方向へ急旋回してしまうのだなあと、それは現在でもあてはまることであろうと思った次第です。
参考1


参考2 単行本は『レッド』が全8巻、『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』が全4巻、『レッド最終章 あさま山荘の10日間』が全1巻あります。
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