かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

インデックスファンドは信託財産に投資先の株式からの配当金を受け入れる段階で、外国所得税や日本の所得税を源泉徴収されているのか

インデックスファンドに限らず、証券投資信託は、外国株式や国内株式を保有して配当金を受け取って信託財産の収益に計上していますから、株式発行会社から配当金が信託財産に向かって支払われるとき、日本も含めた各国の所得税源泉徴収されるのか否か、ずっと疑問に思っておりました。
これの回答の手掛かりになりそうな記述が、税務大学校論叢で公表されていますのでご紹介します。
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/40/kageyama/hajimeni.htm
これはあくまで研究論文の紹介で国税庁の公式見解というわけではなく、本当は根拠法令をあたるべきなのでしょうが、そこまでの根性はありませんでしたすみません。
いわゆるインデックスファンドが区分される証券投資信託は、法人格がなく信託財産に配当を受け入れる段階では課税されない。投資家に分配される段階でのみ、所得税と住民税が源泉徴収されるようです。
(以下本文より部分抜粋)

任意組合等及び証券投資信託等は法人税の課税主体ではなく、投資家等の段階でのみ課税され、外国税額控除も投資家等の段階で適用される。
証券投資信託等は、キャッシュフローベースで課税される。換言すれば、証券投資信託等に係る所得は投資家へ分配されるまで、課税されない取扱いとなっている。
証券投資信託については、その信託財産に帰属する所得は投資家に分配されるまで課税が繰り延べられる。

次に外国株からの配当を信託財産が受け入れる際の、外国政府による課税ですが、これは実際課税されているケースが多い気がします。
楽天証券の外国税額二重課税の調整についてのお知らせ
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20200131-05.html

投資信託等が海外の資産に投資している場合、そこから得られる配当等に対して外国で課税が行われています。

eMAXISSlim全世界株式の運用報告書
https://emaxis.jp/pdf/kouunyou/253425/253425_20210426_k.pdf
8ページ当該投資信託ベンチマークとの差異について

外国株式インデックスマザーファンド
主なプラス要因:その他の要因※によるものです。
※その他の要因には、ファンドとベンチマークで適用される配当税率の差異によるプラス要因などが含まれます。

ベンチマークとなる配当込み指数の計算が30%の本則税率を引き去った後の配当金額を再投資したものとして計算しているが、実際信託財産は米国の場合10%の軽減税率が引き去られて収益入金してくるため、ベンチマークを上回る要因となっていることを説明しているものと思われます。

以上の二つの例から、外国政府により信託財産に外国株の配当が支払われる際に、外国所得税が引き去られていることが分りました。

課税される場合に、当該国の所得税制による本則税率(=米国など30%)で源泉徴収されるのか、租税条約の適用を受ける旨受託会社*1が外国政府に届け出ることによって軽減税率(=米国など10%)になるのか、2通りに分かれます。上記論叢では、

租税条約は二国間条約であるため様々であるが、租税条約上、我が国においてSPVが配当軽減税率の適用を受けるためには、1居住者、2者、3受益者の三つの要件が必要とされるものが多い。
証券投資信託の場合は、信託の受託者は納税主体となっておらず、受益者でもないため要件を満たさず、軽減税率の適用はない。
日英租税条約及び日仏租税条約においては、一般的な配当軽減税率適用条項の他に特別規定を設けており、公認投資基金の運用者又は受託者が、その投資基金に参加する者(投資家)に代わって条約適用の請求ができるという規定になっている。

証券投資信託は原則租税条約による軽減税率を受ける主体となりえないのが原則であるが、二国間条約である租税条約の相手国との規定ぶりによって特別に軽減税率の対象となるようです。実際、先ほどのベンチマークとの差異でプラス要因となっていることからも、受託会社が外国政府に租税条約の届け出をして条約に基づく軽減税率の適用を受けていることがうかがえます。

さてそこで、この外国所得税を日本の所得税から差し引く、外国税額控除が出来るか否かという問題になるわけです。
今回は、信託財産が外国株の配当を受け取る時の課税の有無が主たる内容ですので、外国所得税二重課税の調整について別稿に譲りますが、簡単に結論だけ申し上げます。
・NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAなど分配金の受取時に非課税となる口座で保有する証券投資信託については、外国税額控除を受ける余地がない。
・特定口座及び一般口座に有する証券投資信託ETFについては、外国税額が引き去られた会計期間を対象に分配金が支払われる場合に限って、外国税額控除が自動的に行われる。
参考:楽天証券https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20200131-05.html
ETFについては、運用収益がある限り、半期や一年に一回、必ず分配金を支払わなければならないことになっていますので、金融庁が認めたETFについては外国税額二重課税調整が、投資家への分配金支払い時に必ず行われます。
証券投資信託については、分配金支払い決議を行った会計年度に限って、その会計期間中に引き去られた外国税額のみを対象に二重課税調整が、投資家への分配金支払い時に行われます。
主要な低コストインデックスファンドは、分配金支払いを実際には行わないものがほとんどですから、外国税額は二重課税調整の対象ではなく、費用、つまり外国税額引き去り後の金額が配当収益に計上されることで終了しますね。
実質分配金を出さないインデックスファンドは、外国税額こそ引き去られますが、投資家に分配しないので、収益をまた株の買付に充て、信託財産を増殖させ、基準価額の上昇へ繋がります。
利益が上がる限りETFは毎期分配金を出しますので、分配時に外国税額の二重調整をしてくれますが、利益を信託財産から吐き出してしまいますので、収益の再投資による基準価額の上昇は、分配を行わない証券投資信託に劣後します。
分配金を出した実績のない低コストインデックスファンドとETFは一長一短ありますが、現役世代の方は、外国税額こそ費用として引かれっぱなしになってしまうものの、売却して株式譲渡益課税を受けるまで課税が繰り延べられる、信託財産内で再投資が多く行われより、複利効果が期待できる低コストインデックスファンドを選択なさることをお薦めします。

国税額二重調整についてはこちら
otosak.hatenablog.com
低コストインデックスファンドとETFの比較についてはこちら
otosak.hatenablog.com