かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

和多田峯一「ずるい老人たち」ミネルヴァ書房

図書館の返却図書を一時的に置いてある棚で見かけ、タイトルに惹かれて借りてみました。
ボランティアで高年齢者の結婚相談所を運営している作者が出会った、ずるい老人たちの記録です。初出が1992年と古いので、舞台のしつらえもなんとなく古いのですが、人間の感情やエゴ、男女の出会いで起こる様々は今とまったく同じなので、とても参考になります。
例えば、入会手続きとして戸籍謄本か抄本の提出を求めるのですが、現在配偶者がいないくて真剣に交際と結婚を考えている人を対象にするから当たり前ですーほぼ一年前の戸籍謄本を出してきた男性。とりあえず集まりには参加させたものの、請求してもなかなか新しいのを持ってこない。そうこうするうちにないしょで会の女性と付き合って半同棲状態。それなのに週の初めは「出張だ」と称して必ず出かけていく。おかしいと思った女性は。
そうなんです、実はその後結婚していたのに、二股をかけていたんですね。
寸借詐欺、電話番号を聞いてしつこく迫る、名刺を渡したら会社まで押しかけて来た、会社の会長だというので電話したら「そんな人はいない、迷惑な電話だ」と言われた、とかこれでもかってくらいとんでもない話のオンパレードです。勉強になりますね。
これすべて我欲から来ています。性欲、名誉欲、支配欲、もろもろ。女性は経済的援助や相続財産を求める。男性は身の回りの世話やセックス、プライドをくすぐってほしい。
まず相手を思いやることから始めること。いずれ感謝が返ってくることを期待して、という作者の信念は我欲の騒音にかき消されがち。
思うに、人にも自分にも誠実になれるかどうかは、もう若いときにほぼ決まっていて、人生の途中でよっぽどショックを受けて「自分は変わりたい」と思うような自省の心がないかぎり、そのままいっちゃうんでしょうね。不良少年は不良青年から不良中年になって不良老人となる。なんとも考えるとごく当たり前の現象なのです。悪い奴は若いときから悪い奴。
相談所も、真面目な人がバカをみないように、「絶対名刺を貰わない、渡さない」「住所や電話番号を言わない、聞かない」「会に内緒で交際しない」ルールを申し渡して、最初の3回3か月間は個別に会ってみたいカードは提出できない、その後マッチングしたら事務所で一度会ってから個別交際開始、半年は交際してみる、子供に話をして理解してもらうには半年以上かかる、拙速では結局「違う」ことになって時間が無駄になりますよ、と経験から様々工夫している。これも人生訓で勉強になります。最初は舞い上がってみんな美男美女に見えるけど3回(3か月)集まりにでると冷静になってくる、なんてところ。
こうやって事例を見ている分には騙されないぞ、と思うけど、実際には言葉巧みに調子よくしゃべられて丸め込まれて騙されちゃうんだろうなあ、と思いました。