かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

幸福の「資本」論-あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

橘玲さんの本をご紹介します。

3つの資本とは、金融資産、人的資本、社会資本のこと。金融資産はいわずもがな株や預金などですね。人的資本とは自分の稼ぐための技能や能力。社会資本とは人付き合いのこと。それによって頼り頼られる関係が構築される。
橘さんの意見としては、この3つのすべてを持っている人はほぼいないとのこと。しかしそのうち2つを持っていれば老後も幸福に過ごせるんじゃないか。
物凄くざっくりいうとそういうことです。そこんところを内容を詳しく述べて、じゃあどうやったらそれを獲得できているのかな、という例を挙げて解説してくれています。

老後にお金が足りない、ばっかり注目されてきたけど、じゃあ幸せな人生って何なのという問題提起はアメリカ方面からばっかり紹介されて、日本国内で論じている人はいるのかな。女性は沢山子育て後や独り身老後について書いていらっしゃるけど、自分の事例を眺めて述べてくれていて、それはそれで参考になるけど、抽象度を上げて要素分解して考えてくれるような本はほとんど見られませんね。

読んでいただくのが一番ですが、こちらでは私が衝撃を受けた事例2つをご紹介しておきます。

一つは、社内会議や取引先のプレゼンで説明する前になると必ず具合が悪くなって鬱病が疑われて休職した方のお話。
この例をご紹介した産業医だったか精神科医だったかのお医者さんの見立てによれば「それは鬱病ではない。営業や商品に関する知識不足に基づく自信のなさから来ている」というやつ。

これねー、自分も似たような境遇だったからがーんと来ましたよ。
確かに定年前駆け込み退職する直前、慣れている仕事に加えて、編成上まったく未知の仕事を分担している社員を部下に持つことになって、いきなり苦情対応させられて、ぜんぜんわからないし、内部資料や事務規定もばらばら、しかもペーパーからクラウド移行中でシステムもしょっちゅう変更されつつあり、その分野でずっとやってきた人に聞いてもよくわからず。ノイローゼ寸前となり。
他の要素もあったのですが、これが第一の引き金となって辞めちゃったわけです。鬱病になりそうな危険を感じて離脱したんだ、と思っていましたが、私も仕事の技能不足が原因だといえなくもない。
未知の仕事の教育訓練もなく、時間外に勉強する教材もなく、6時半になるとサーバー閉じちゃうし、どっちみち時間もないし。いきなりおっぽりだされて自分でやれって言われている人結構多いかもしれませんが、中間管理職の私はすごく孤独だった。もうちょっと教育体制しっかりしてくれないとね。
まあこの時自分の金融資産をあらためて棚卸してみたら、安心して辞めることができたのでそれは済んだこと。ちなみに安心して辞めることが出来て「幸運だった」と書きそうになったけど、これは運ではありません。それまでに「ほったらかし投資術」の本を読んで貯蓄と投資を曲がりなりにもしていたからで、自分よくやった、ということです。
皆さんも、いざというときの備えとしてインデックス投信に投資するのがよろしいとここでもお伝えしておきます。詳しくは私のブログの「投資をはじめる」トピックを読んで自分で学んでいただければ幸いです。

話がそれました。2つめのエピソード。

アメリカの会社で日本の会社がよくやっている「カイゼン」「QCサークル」みたいな従業員が自発的に業務を改善していく雰囲気を作るというやりかたを導入したらどうなったか、というお話。
最初は従業員が相互監視しているみたいになった。「あの人また遅刻してきた。」じゃあ、あなたが遅刻するとあなた自身もよくないし、事情があるならシフト変えましょうよ、みんなも心配してるよ、と声をかけたりする。
これが第二段階にすすむと、四六時中、業務を離れても「自分の業務はどうやったらもっとミスが減らせたり、無駄がなくなったりできるのか」考えるようになってくる。そうして自宅でも考えている妻に、アメリカらしい会社に勤める夫は「クレイジーだ」とコメント。言われたことをやって、自分の職務範囲じゃない事には口をはさまない。会社の門をでたらすべて忘れる。そうやってずっと生きてきた夫からすると、妻は「クレイジー」である。
自宅でそこまで考えるか、という程度の問題はあるにせよ、従業員の自発的改善運動を業務に組み込むってしごく日本的でよくみる光景とは思うけど、こうやってリタイア―して俯瞰してみると、経営者の巧妙な罠にはまっているともいえますね。だって改善したからって手当てが増えるわけでもなし勤務時間が減るわけでもなし業務密度が減るわけでもない。

私は現役時代ずっと「無駄な業務はやり方を変えるか省略して空き時間を作って、勉強して業務知識を増やしてお客さんへの対応をスムースにしたり、じっくり取り組んでミスを減らして、更なるアイデアを考える時間にしたいなー」とずっと思っていて、自分がラクになるからやるんだ、と思っていました。もちろん理想としてね。実際は業務に追われて、支障のない業務は省略か後回し、みたいにアップアップで“改善・省略しないと自分が死ぬ”感じだったから、特に辞めるまでの5年間ぐらいは。

でまた話を戻すと、アメリカの会社にも日本的な業務遂行型を導入可能だった、ということだけではなく、導入すると「仲間の一体感醸成→雰囲気についてこれない人は自然淘汰→宗教的」な、例えば残業をカウントしないみたいな、日本によくある風景が同様にみられるようになった、というくだりに衝撃を受けたわけです。
文化の違いじゃなくて、業務遂行の方針を米国式から日本式に変えて定着してくると日本的サラリーマンいっちょあがり、みたいになってしまう。これは驚くところでしょう。
以上二つエピソードをご紹介しましたが、これらは三つの資本の形成と幸福への道筋の過程で紹介された症例、サイドストーリー的位置づけではありますが、そうだったのか、という衝撃が強かったので特にご紹介した次第です。思いもかけなかった思考過程へ目を開かせてくれる、まさに啓蒙(蒙をひらく)の書だと思います。一読をお薦めします。