かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

どうなったら暗記したって言えるの

暗記が必要とされる理由

前回は、学習方法でよく言われる「暗記しろ」について、手段である暗記法の片鱗についてお話しましたが、次に手段である暗記法から、目的であるどうなったら暗記できた、達成したって言えるのか、という点を考察していきます。

三種類の暗記できた状態

実は私が思う暗記状態、学習習得状態といってもいいですけど三種類あります。
1.そのまま一字一句違いなく再現しなければならないもの
2.必要な刺激に応じて、正確な内容を基にして求められる形式に変形して出さなければならないもの
3.応用課題に道具として使用し、解決に導けるもの
言い換えると、試験で高得点を取るとか合格するとかいった目的を達成するため他人に向かって吐き出されるものとして三種類のどれかが必要とされていると考えてよいと思います。
この最終目的から暗記法を逆に考察するというのも極めて重要かと思います。

どの暗記状態が必要とされるか

一番目は、表現芸術、特に時間芸術を行う者にとって極めて重要かつ当たり前のことです。私の場合は時間芸術である音楽、舞台における合唱と独唱ですね。
二番目は、ほとんどの人が苦労してぶち当たる項目です。入学試験、資格試験、入社試験における筆記や口頭短答試問などです。
三番目は、知識そのものを問う段階から進んで、知識を使って知見を組み立てる、論理が必要な数的操作や論文作文に必要な状態です。

暗記到達への方法

さて、具体的に試験準備をする方法としては、①範囲が膨大すぎるので、実際の試験問題にあたって知識を増やし背後にある基本的な考え方は触る程度にするものと、②道具として使えるまでに習熟した土台を築いておかないとどうしようもないものがある、と思います。範囲が膨大だということは逆に言うと、ある問いかけについて知ってさえいれば答えが出せ、それ以上の考察がいらない、という場合が多いですね。知識量勝負ってやつ。

一番目に属するものとしては、音楽、ダンス、詩の朗読などが思い浮かびます。音楽は様式、ダンスは肉体の動きや配置の制約、詩の朗読には意味の繋がりといった、次に何が出てくるか脳が得意な連想記憶で対処できるし、体の動きや口と耳といった複数の感覚器官を嫌でも使いますので、そのまま覚えるための繰り返しはそれほど苦痛ではない。音楽は主題があってそれが次々変形されてあちこちで使われることによってその曲の個性が明確になる部分もある。

二番目。私の経験した範囲でお話しますと、公務員試験での選択問題。範囲が膨大なので、ウエイトの大きい科目は入門書を読みましたが、それ以外はすべて実際の問題にあたり、解答解説から考え方を知るという浅く広いやり方を取りました。ここでは暗記法が出てくる感じがしません。個別撃破理解知識習得という形で、そっくりそのまま再現しなければならない要素があまりないので、数多く繰り返し当たってその結果覚えてくるという経過を取りました。これの欠点は「できた」と実感できるものを積み上げている間隔が生まれないことです。
数的問題以外は、法律の凡例など最後は勘で答えていたようなもので、合否が読めないです。

社会人になってから始めた英語については、最初に勉強方法について「私は〇〇した」みたいな本をたくさん読んで勉強の仕方を研究してから始めました。
その結果基礎的文法の100%理解、次に語彙力の充実と試験問題慣れという段階を踏んで学習し、試験では点数の積み上げ予想もある程度でき、進歩が実感できたのがよかったです。ここでは、文法について、三番目の道具として使いこなす、語彙について二番目の知識量を増やすという要素の組み合わせだったのだと思います。ただこれらも繰り返し読んだり書いたり口にしたり聞いたりを広い範囲で繰り返したので、あまり世間一般でいう「暗記をしていた」感がなかったですね。英文法の本については、一通り読み終わったら最初の部分に再度触れるのは一か月以上経ってから、そうしないと前に読んでいた記憶をなぞって「読んだ気になっているけど読んでない」状態になるだろう、と思っていました。どうやらこれは正しい行動だったようです。英語の試験では知識そのものを問われる場面はごく少なく、刺激に対して反射で回答を引っ張り出すための整理された記憶の倉庫が必要とされる感じです。ゆえに短い単元を繰り返すより、より広い範囲を周回しつつ過去に学んだはずのことでも新たな驚きと発見がある状態で学べるような間隔をとることが大事だと思いました。

法文系の知識試験や数学の問題を一番目の方法でこなしている人もいるようですが、お薦めしません。脳の記憶容量は相当大きいようですが、それを瞬時に引き出せるためには神経細胞の連繋が何より必要。意識レベルでは連想と意味付けが必要でしょう。特定の問題へ特定の回答を結び付けると、少し条件を変えただけで行き詰まってしまうし、知識の応用がきかない、ひいては思考力が高まらない、試験が終わったら忘れる、正確に言うと引き出しようがなくなるというべきでしょうが、いいことがないように思います。何より意味を知り発見の驚きがないのによく覚えられるなあ、と逆に私なんか感心しちゃうんですが。
みなさまはいかがでしょうか。