かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

特定口座を取り崩してでもNISAに乗り換えるべきか

2024年に始まるNISAは非課税期間が無期限です。正確に言うと死亡失踪その他で相続が開始するまでですが。
今回は、そのNISA口座を使って株式や投資信託に投資して、配当金や分配金、時価の上昇により売却時に得られる譲渡益について所得税と住民税が非課税となるわけですが、投入すべき資金が預貯金や現金から十分に用意できない場合、特定口座にある株式や投資信託を売却して、新たにNISA口座にて買い替えをすべきかどうか、なるべく数式なしで損得を計算してみたいと思います。

NISA口座にて新規資金で投資できる人

まずは特定口座にある資産を売却しなくても、NISA枠いっぱい、又は自分なりに十分と思う水準で現金を用意できて投資できる人についてお話します。
結論:特定口座にあるリスク資産を取り崩す必要はありません。

年間投資枠をめいっぱい、又は自分の納得いくリスク資産割合までNISA口座で買い付けるのであれば、特定口座のリスク資産を取り崩す必要はありません。
だって非課税枠は目いっぱい使っているので、
特定口座のリスク資産を売却して譲渡益を実現して所得税・住民税を負担する理由は、
ありませんから。
ここで“年間投資枠をめいっぱい、又は自分の納得いく”と言うのは、無理してNISA口座にてリスク資産に投資して、自分にとって丁度良い安全資産:リスク資産の比率、リスク無リスク割合が崩れては素も子もないからです。

ではリスク無リスク資産の比率、リスクバランスを考慮した上で、
NISA口座にて投資をしたい、非課税だから。
でも新規に投入する資金がない。だったら
特定口座にあるリスク資産を売ってでも、NISA口座で新規買付をすべきか。
これは先ほどの“NISA口座に新規資金を投入できる”人が二年目以降に「そういえばもう新規で投入できる資金がないわね」という場面に直面した場合、同じ問題に突き当たります。

NISA口座にて新規資金で投資できない。だったら特定口座の資産を売るべきか

分かりやすくするため、
特定口座では一銘柄だけ保有
売却時に譲渡益があれば2割で課税される
NISA口座では同一銘柄を買い付ける
資産の売買に係る諸費用・手数料はないものとする
という前提でお話します。

譲渡益がある状態で買い替えすると


90で購入したリスク資産が時価100になり、譲渡益が10生じている。
売却により10×20%=2 が税金として引かれる。手取は98。
直ちにNISA口座にて買付。時価100なので追加投入資金2が必要だった。
NISA口座で保有した後、売却する出口では二つの場合が考えられます。
(1) 売却額が92未満の場合
トータルリターンは、損失となります。
旧取得価額で90投入→売却で90取り戻せた。
譲渡益10のうち10は貰えず、税金を引かれた8だけ現金が入ってくる。
NISAにて時価100で買い付ける必要があるので、手取98に2だけ追加現金が必要。
つまり特定口座→NISA口座に買い替えた段階で、手持ち資金を92投入している。
結論:NISA口座の出口=売却価格が92を下回ればトータルリターンはマイナス。
※ここで単元株のようなものではなく、投資信託100口分だったというような1の単位で購入単価が調節できる商品であれば、追加現金を投入せず、手取の98を新規買付に使って納得する、という考え方もあります。
(2) 売却額が92以上の場合
特定口座→NISA口座を通じて、資金の投入はトータル92。ということは、
結論:売却価格が92以上になればトータルリターンはプラス。
なぜなら譲渡益はいくらであろうとも非課税なので。

右肩上がりが期待できる資産であれば、特定口座でほっておくほど、
譲渡益が大きくなる=税金も大きくなる。
⇒NISAで買い替える時期が遅くなるほど、旧取得価額+税額の手出しが多くなる。
⇒トータルリターンの損益分岐点が上がる。
⇒出来るだけ早く特定口座で損益を確定し、NISA口座にて買い付けるのがお得。
ということになります。

譲渡損がある状態で買い替えすると


90で購入したリスク資産が時価80になり、譲渡損が10生じている。
売却により引かれる税金はなく、80が手元に戻る。
直ちにNISA口座にて買付。時価80なので戻った資金を丸々投入する。
NISA口座で保有した後、売却する出口では次の二つの場合が考えられます。
(1) 売却額が90未満の場合
トータルリターンは、損失となります。
旧取得価額で90投入→売却で90が取り戻せなかった。
特定口座で売却しNISA口座で購入した時の追加資金投入はありません。
結論:NISA口座の出口=売却価格が90を下回ればトータルリターンはマイナス。
(2) 売却額が90以上の場合
特定口座→NISA口座を通じて、資金の投入はトータル90。ということは、
結論:売却価格が90以上になればトータルリターンはプラス。
なぜなら譲渡益はいくらであろうとも非課税なので。
NISA口座での取得価額は80ですが元々資金を90投入して譲渡損で10失っている。その10を取り返す譲渡益が生じればそれは非課税なので税金がひかれない。ということは10まるまる取り返すことができる。
※特定口座での売却時に生じた譲渡損失を、同年分の配当所得や別の譲渡益と損益通算できれば、もちろんその分だけトータルリターンはプラスに振れます。今回は話をややこしくしないためにそういった条件は度外視しました。

特定口座にある資産を売却してNISA口座で買うべきか

新規資金がない方は、直ちに特定口座内資産を売却してNISA口座で買い直すべきでしょう。
ただし、
・特定口座で生じた売却損を確定申告で損益通算したい
・特定口座で生じた損益を確定申告に反映させると住民税の額に影響する
というような条件が付く方はそちらへの影響も考慮する必要があります。

またNISA口座にて買い直した資産が、
まったく下がらないという保証はありません。

特定口座譲渡益の場合:旧取得価額+税金分
特定口座譲渡損の場合:旧取得価額
を上回ればトータルリターンはプラスです。

ただしNISA口座の非課税期間は、あなたは生存している限り無期限ですので、
右肩上がりが期待できる資産を
長期に保有する
ということでしたら、トータルリターンが損失になる確率は下がる可能性が高い。
とまでは言えます。
また、
この際だから、信託報酬率の高い特定口座にある商品を売却して、NISA口座にて信託報酬率が低めの別商品に乗り換えよう
という場合にも、上記の4つの場合分けは応用できますから、
特定口座にほっておくと、
譲渡益が大きくなる=税金が大きくなる=トータルリターンの損益分岐点が上がる
という経路は参考になると思います。