かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

暮れの第九に思う

クラシックファンの年末の話題といえば、第九。
ベートーベン作曲の交響曲第九番ニ短調
1940年にドイツでは大晦日に演奏しますよ、とNHKの洋楽課員、三宅善三さんがN響によるラジオ生放送を企画し受けた。戦後の窮乏時代、暮れに正月用のモチ代を稼ぐため盛んに放送され、1956年には群馬交響楽団の演奏会の成功と共に全国各地のオーケストラが演目に取り入れるようになったのが暮れの第九の発端だそうです。

聞いている分にはいいんですけどね。
最近「第九を歌おう」という企画が増えてきて、誰でも参加できますという触れ込みだから、「聞いているだけじゃなくって、舞台でスポットライト浴びながら歌ってみたい」という人が増えました。

合唱に触れて合唱を楽しむ人が増えるのは嬉しい事なのですが。
私だけでなく、プロの指揮者の方々も皆おっしゃいますのは「第九は決して易しくない」「むしろ難しい」「合唱を始めてもらうきっかけになったのはいいけど、何で第九になっちゃったかね」というのが本音です。
第九って祝祭感があって、暮れを引き締めて来年を新しい気持ちになって迎えよう、って心境にぴったり。だからここまで普及したのはわかりますけど。
ハロウィンや土用の丑の日並みに年中行事として定着した感がある。

経済法則によって、需要が供給を上回るとどうなるか。
他のプログラムと違ってチケット代が高くなるのですよ。
私は今週から第九ウィークが始まる。既に練習は10月から始まっていますが、昨年は落ちたオーディションにも無事受かって、いよいよ今週から最終練習→リハーサル→本番の流れとなる。
歴代の指導者から「お客さんは(特別)高いお金を出して聞きに来てくれるのですから、それに見合った質で歌ってください」と、よく言われる。
ついでに「S席に向かって歌ってください」と言われることもある。これは特に高い金を出している客に向かって歌ってね、というのは冗談で、たまたまホールの作りがS席ブロックに向けて声を当てると全体がよく鳴るよ、という指導なのでした。ホールと合唱席の関係にもよるけど。

練習で毎回毎回感じるのは「第九って難しい」ということ。しかも一応日々訓練というか鍛錬をしつつ過ごしているにもかかわらず練習が終わると疲労感が半端ない。体もすごく使う。他の演目でさぼっているわけでもないのに。

「第九を歌いにいきたーい」普段合唱をやらない人たちに話を戻します。
歌うのが難しいよ。繰り返し言いました。
どういう点が難しいかというと、主に二つ。
音の跳躍が半端ないことと、普段使わない高い音域で、しかも力強い声で歌い続ける箇所が多い。
ドイツ語のさばきとか、息継ぎの場所のなさをどうするか、という点もあるけど。
シャープやフラットが多いわけでもないし、難しいリズムがさほどあるようには見えないけど、「第九を歌いたい」と公募合唱団に応募して練習に参加した方はわかると思います。普段出したことのない音域で強く歌うとどうなるか。
声が枯れます。
発声の基本は練習の最初の段階や、毎回の練習の初めにウォーミングアップで教えてもらえるとは思いますが、やっぱり急に身に付くものでもないので。
歌う楽しみに水をさすようですが、無理せず歌ってほしいな、と思います。
いや、無理しないと歌えないわ、とは思いますよ。
だがしかし、練習で無理して本番で声がでなくなる、という悲劇は避けたい。
何を言ったらいいのか分からなくなりました。
もっと喉に負担がかからない曲が流行ればよかったのにと思います。