かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

分配金と無分配投信の一部売却 どちらが有利か

分配金が出るvs出ない

分配金の出る投資信託は、自分で部分売却をする手間や抵抗感がないので優れている、という意見があるようです。
当期利益を分配する投資信託 vs 分配金を一度も出したことがない投資信託
どちらがどうなのか、考えてみました。

資産形成期

資産形成期においては、
i. 分配金が支払われる時に所得税及び住民税が差し引かれる
ii. 手取の分配金を再投資するとNISAの年間枠や生涯枠を消費する
iii. 分配から再投資までのタイムラグがあれば複利効果が減殺される
iv. 分配がなければ税金を引かれることなくファンド内で自動再投資
という理由から、無分配の投資信託一択であると私は思います。
もちろん、実経費率が低い、純資産総額が30億円以上で繰上償還の危険性が低い、などの他の属性も十分満たした上でのことですが。

資産取崩期

資産取崩期においてはどうでしょうか。
自動で分配してくれるから手間いらず。→手持ちの分配型投資信託からの分配金合計と取り崩して手に入れたいと思っている金額と一致しないのなら、どっちみち一部売却することになるんじゃないの?または貰いすぎで無駄じゃない?
積み上げた投資信託の一部解約は抵抗感がある→ちょっとでも売却してみるとわかりますけど全然抵抗感ありませんでした。
自分脳内会議で自分を論破してしまい、特に分配型に肩入れする理由はありませんでした。
それに資産形成期は分配しない投資信託一択ですよ、と言っていたら取崩期に残っているのは自動的に分配をしない投資信託しか残高ないじゃん。
お金を貰って嬉しいとか、テーマ型投資信託に参加しているんだーというような気持や趣味の問題のような気がしてきました。

複利効果以外に優劣はあるのか

基準価額10,000円で毎年5%相当額の利益があり、同額基準価額が上昇するファンドを想定します。
(全部分配型ファンドの分配金税金計算)
それを全部分配金として出すファンドだと

期末の基準価額は10,000+500(5%相当額)=10,500となります。
そのうち500を分配すると、税率20%として税額100、手取りは400。
分配直後に基準価額は10,000-500=10,000に下がる
これを毎年繰り返すことになります。
10年目の期末に分配金を貰った直後に譲渡すると
収入金額10,000―取得費10,000=譲渡益0
手じまいとなる。
手取総額は10,000+400×10=14,000円
税金総額は100×10=1,000円
(無分配型ファンドの一部売却税金計算)
次に同じ仕様で全く分配しないタイプの投資信託を想定します。分配しないので、毎年500円分解約請求(=一部売却)することにします。

まず一年目の期末。基準価額は10,500円。そのうち500円分を解約。
先ほどと違い、500円分のうちには、取得価額を崩したものと、当期利益を崩したものが混ざっています。
取得価額を崩した部分:500円×10,000/10,500=476円
当期利益を崩した部分:500円×500/10,500=24円
収入金額500円―取得費476円=譲渡益24円
24円×税率20%=4円80銭(実計算では円未満切捨てとなるでしょう)
これだと分配金受取より一部解約が税金上有利なように見えますね。
本当でしょうか。
二年目にいきます。
まず基準価額ですが、
取得価額で取崩後残った9,524円+当期利益の残り476円=10,000円
一年目期末の基準価額10,500円から500円崩したから10,000円、と考えても一緒です。
投資信託側では、投資家が元手を出した取得価額か、運用によって得た利益か、決算が終わればお金を区別する必要もないので10,000円を運用していく。
二年目の年末に基準価額は5%相当額が増えて10,500円となる。
分配型と違うのは、二年目の基準価額を投資家側からみると、
取得価額から構成される9,524円
当期利益の累積から構成される976円
というように解約した場合の譲渡益の計算要素が一年目と異なることです。
ここで500円分解約請求すると
取得価額を崩した部分:500円×9,524/10,500=454円
累積利益を崩した部分:500円×976/10,500=46円
収入金額500円―取得費454円=譲渡益46円
46円×税率20%=9円20銭
解約請求額500円のうちに占める取得原価の割合が低下したので譲渡益が増え、税金が増えました。以下繰り返しを表にまとめますと、

基準価額 取得価額部分 累積利益部分 取得費 譲渡益 税率20%
1年 10,500 10,000 500 476 24 4.8
2年 10,500 9,524 976 454 46 9.2
3年 10,500 9,070 1,430 432 68 13.6
4年 10,500 8,638 1,862 411 89 17.8
5年 10,500 8,227 2,273 392 108 21.6
6年 10,500 7,835 2,665 373 127 25.4
7年 10,500 7,462 3,038 355 145 29
8年 10,500 7,107 3,393 338 162 32.4
9年 10,500 6,769 3,731 322 178 35.6
10年 10,500 6,447 4,053 307 193 38.6
売却 6,140 3,860 772
全期間合計 10,000 5,000 1,000

税金のかかる時期が違うだけで、最終的な税額合計も手取も同じになりました。
税金がかかる場合で同じと言うことは、NISA口座で保有し税金がかからない場合でも同じだということです。

モデルケースではなぜ結論が一緒か

分配型だろうが無分配だろうがかかる税額の合計は一緒、NISA口座持ちで無税でも一緒
なんて驚くような結果ですが、それはまさにこのモデルの立て方によるものです。
・毎期利益を全部分配vs利益相当額と同額を解約
→翌期首の基準価額が最初と同じになる。
複利効果がまったく生じない。
ということと、
・毎期一定の5%の利益が生ずると仮定している。
さらに
・十年後、全部解約して手じまいしている。
この三つの理由により、税金のかかる時期だけずれて、あとは手取も利益額も一緒になったのです。

モデルケースの示唆するところ

無分配型では譲渡益計算をするとき、早い時期程取得費が大きく、譲渡益が小さいため税額は後々へ繰り延べられます。右肩上がりの時期であれば、利益が多く留保されている部分にさらに利益が乗る複利効果が期待できる反面、元々の手出しである取得価額が多めの取得費払出により持分自体が減るので効果は帳消しとなる。
NISA口座持ちの場合は分配金だろうが解約による一部取崩だろうが、持分の基準価額は同様に下がるので結論は一緒。
とすると税金がかかる場合に初期に税額が少なく手取りが大きい時期に貰っておいてそれを運用しよう?

一部でも再投資を行う時は

ここで気が付いた方も多いかと思いますが、分配だろうが無分配の解約請求だろうが、貰ったお金を再投資するのなら、それは意味のない発想だ、ということです。

受けた分配金は手持ちの資金に溶け込みます。お金に色はつかないから。そこから全額を家計その他の支出に費消してしまうのではなく、一部でも再投資に回しているとすれば分配金の再投資に他なりません。
「いやいや分配金は家計に入れて、投資は手持ち資金から証券会社にお金を入れていますよ」と言っても、それは手持ち資金がへこんだ分だけ分配金で埋めたのと同様です。
洗面器に水を入れて(=解約)平らになった。そこから水をくみ出していった(=再投資)ということにほかなりません。
支出が全部投資以外に費消されていた場合だけ「分配金を使っている」と言えるのです。
以上のことはNISA口座に置いたファンドから、無税で分配金が貰えたとしても変わりません。税金の負担がないだけで再投資をしたことになります。
それだと簿価ベースで年間枠と生涯投資枠を設定されているNISAの枠を新たに使うことになり、含み益状態で元本を保持している無分配のファンドに比べるとNISA枠を余計に使っていることになる。

まとめ

・NISAの枠の余計な費消にならない
・資産形成期には無分配型が有利なのでそうしていたら、資産取崩期には結果として無分配型しか残っていない。
という二点で無分配型を支持する結論となりました。
分配を受けようが一部解約しようが、持分が減るから同様の複利効果しか生まれません。
一部解約は税金の引き去りが少なく始まって逓増する。でもトータルでは一緒。NISA口座で無税なら手取に差はない
分配型のETFやファンドは、
・確定申告せず、特定口座内で外税控除を受けて受け取りたい
・取崩期で全額生活費や支出に使う
・お金を貰って嬉しい、はげみになる
という人だけにお薦めします。