かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

チャールズ・エリス「敗者のゲーム」第三版日本経済新聞社

前回に引き続き、ブログ始めるよりも前に書かれた読書感想文です。

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元々は機関投資家や運用会社関係者向けに書かれた本でしたが、この第三版で第III部 個人投資家への助言 が書き加えられました。第I部と第II部は、運用周りのプロ向けの部分であるので抽象的で難しいと感じたらとばしてもよいと思います。ただし第III部は投資をしようとする個人、投資をしている個人にとっては必読です。
第III部冒頭は、損失をどう受けとめるか。一番重要、かつ、一番難しい課題です。特に株式投資の場合に長期的成功のためには、短期的損失は避けられないので覚悟しよう、と宣言されます。続いてインフレの恐ろしさ。なんとインフレ率2%であっても36年で財産の実質価値は半分に。それから、高いときに買いたくなり、安いときに売ろうとする誘惑の話。牛乳や靴、自動車だったら安く買おうとするのに、株だとなぜ「バーゲンセールの時には買いたくない。値段が上がった時に買います。」と言ってしまうのでしょう。
そして生涯を通じた投資プランをたてようということで、年齢別の貯蓄目標額。ここでも課税とそれよりはるかに怖いインフレの話がでてきます。名目複利収益率が6.1%の財務省証券(米国国債)で35年運用したら100万ドルが800万ドルに。でも税金を引くと350万ドル。インフレ調整で実質値にすると70万ドル。なんと3割も減価してしまいました。債券でも実質購買力は1割増し程度。ということでエリス氏は、株式投資の割合を多くすることをお薦めしています。そして人生の終盤で成功するために、残ったお金をどうするか。子供に生前贈与する、信託契約の設定などは、税制の違いもあるのでそのまま日本で当てはまるわけではありませんが、「将来についてあなたが今、決断することによってのみ」運用目的の達成に最大限貢献できるのです。遺産税(日本でいう相続税)は、遺産という資産に対する課税ではなく、自分の財産の分配について生きている間に重要な意思決定ができなかったペナルティとしてとらえてはどうか、と。
最後は、収入、貯蓄、運用、寄付、遺産贈与という人生における金銭面の成功の局面をまとめ、この本の題名「敗者のゲーム」に打ち勝つ方法を述べてしめくくります。
運用の結果は思い通りにならないけれど、相場の動きにどう反応するかは自分で決められる。それが長期的な成功のはるかに重要な要素なのです、という運用の話から、あなたにとって積み上げた資産の価値は何ですか、というところまで考えせられてしまう本でした。
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2020.6.21 読書感想録より