かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

中村すえこ「女子少年院の少女たち」さくら舎

私この本で「虞犯(ぐはん)」という言葉を初めて知りました。犯罪を犯すおそれのある者だそうです。犯罪を犯すおそれがあるだけで少年院へ入れられてしまうっていきすぎじゃない、と思いますよね。それは少年院を罰を受け反省する場所だと思うからです。
この本に出てくる虞犯の少女は、パパ活したお金をホストに貢いで家出してホストと暮らしていたら殴られたといいます。
この境遇に陥った環境から強制的に抜いて、対家族との関係性も含めて自分を大事にすること、嫌なことは嫌だといえること、まっとうな日常生活を営んでいけるようになるための訓練を積むこと、そのために少年院はあるのですね。
実際、入院してくる者たちに特徴的なのは、虫歯が多いということです。歯を磨くという習慣を教えてもらっていない。食事は朝昼晩と三食食べるということを入院して初めて知った者もいるそうです。
少年院では、自分に向き合い、自分に問うことを繰り返し学習づけられます。内省の時間。もちろん、少年院を出た後、中間支援施設や親元から職親プロジェクト企業などで働きながら、社会への適応の段階を踏みますが、そう簡単ではありません。大人たちが支援してやっているんだと恩着せがましい態度をついとったり、常識がないことをいきなり怒ったりすれば、助けてくれってたのんだわけじゃねーよ、じゃあどうすればいいっていうんだ、という怒りが鬱積するだけでしょう。今までずっとほっておいたんじゃないか、というまわりの大人への不信感のみで育ってきた者たちはたちまち心を閉ざしてささやかな自我を守ることしかできないのです。このへん前々回紹介本下地毅「ルポ東尋坊」緑風出版 - 心に刺さった本に出てくる人たちの生きづらさと共通するものがあります。
本の最後の方に出てくる子供家庭サポーターの方が「今ならわかる、親を支える支援が一番大切。」とおっしゃっています。そしてその方の所で暮らすルール。「自分の心を我慢してまで人の言うことを聞かない」子供が大人はずるい、と思うのは、自分が守れないルールを親が押し付けてくるときだそうです。耳が痛いですね。
同く少年院を経験した筆者が、このような少年院の活動と、入院者のその後を伝えたくてドキュメンタリー映画を作る過程で出会った少女たちのその後、映画では伝えきれなかったこと、それを伝えるために本書は上梓されました。何より周りの人の影響に流されていないで、自分は本当はどうしたいのか、何から目を逸らしていたのか、何がイヤだったのか、どうしてそれが言えなかったのか、自分の本心に繰り返し問いかけること、それが自分を大切にすること愛すること、そこを出発点にしなければ人を愛することはできない、とこの本は主張している、そう私は受け止めました。少年院はそのことを繰り返し教えてくれた、そしてその力の輝きは確実に本書の中に現れている、そうわたくしは思いました。