複利効果とは、投資の果実を得るごとに元本に再投資していくことで、利益が利益を生み、ふくらんでいく効果を言います。計算してみましょう。
期首100投資して1%~5%の利益がつくとしましょう。左側の例では、それを分配せずに元本に残しておき、翌期はそこからまた1%~5%の利益がつくという計算を10年間続けたものです。
それに対して右側の例では、ついた利益を全額分配し、それから20.315%の源泉所得税を控除して現金で受け取る、ですから翌期首は毎年100に戻る、ということを10年間繰り返しています。税引き後の分配金は現金で受け取って再投資しないものとしていますので、10年分の税引き後分配金の合計と当初投資額100が手に入るという計算です。
期 | 期首 | 成長率 | 期末 | 期首 | 成長率 | 期末 | 配当-税金 | 配当後期末 | |
1 | 100 | 1.05 | 105 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
2 | 105 | 1.05 | 110.25 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
3 | 110.25 | 1.05 | 115.7625 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
4 | 115.7625 | 1.05 | 121.550625 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
5 | 121.550625 | 1.05 | 127.6281563 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
6 | 127.6281563 | 1.05 | 134.0095641 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
7 | 134.0095641 | 1.05 | 140.7100423 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
8 | 140.7100423 | 1.05 | 147.7455444 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
9 | 147.7455444 | 1.05 | 155.1328216 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
10 | 155.1328216 | 1.05 | 162.8894627 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 100 | |
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配当合計 | 39.8425 | 139.8425 |
このシミュレーションを1%~5%の場合でそれぞれ10年後にいくらとなるかまとめたものが次の表です。
成長率 | 配当なし | 全配当 | 減少率 |
1% | 110.4622 | 107.9685 | -2.3% |
2% | 121.8994 | 115.937 | -4.9% |
3% | 134.3916 | 123.9055 | -7.8% |
4% | 148.0244 | 131.874 | -10.9% |
5% | 162.8895 | 139.8425 | -14.1% |
減少率は、全配当÷配当なし-1で求めました。つまり配当なしを100%としたときに全配当が何パーセントにあたるか計算して1を引いたものです。
利益を配当せずに元本に積み上げて投資していくと、企業が毎期5%の利益を上げた場合で10年経つと139.8425÷162.8895=85.9% 100%-85.9%=14.1% なんと14%も劣後してしまいます。
もう一つ計算します。今度は右側は全額分配して源泉所得税20.315%引かれた現金を直ちに投資した場合です。
期首 | 成長率 | 期末 | 配当-税金 | 配当再投資 | |
1 | 100 | 1.05 | 105 | 3.98425 | 103.98425 |
2 | 103.98425 | 1.05 | 109.1834625 | 4.142992481 | 108.1272425 |
3 | 108.1272425 | 1.05 | 113.5336046 | 4.308059659 | 112.4353021 |
4 | 112.4353021 | 1.05 | 118.0570672 | 4.479703525 | 116.9150057 |
5 | 116.9150057 | 1.05 | 122.7607559 | 4.658186113 | 121.5731918 |
6 | 121.5731918 | 1.05 | 127.6518514 | 4.843779893 | 126.4169717 |
7 | 126.4169717 | 1.05 | 132.7378203 | 5.036768194 | 131.4537399 |
8 | 131.4537399 | 1.05 | 138.0264269 | 5.237445631 | 136.6911855 |
9 | 136.6911855 | 1.05 | 143.5257448 | 5.446118558 | 142.1373041 |
10 | 142.1373041 | 1.05 | 149.2441693 | 5.663105537 | 147.8004096 |
例えば上の5%利益の例ですと、初年度利益5×(1-20.315%)=3.98425 これを直ちに投資して翌期首元本は100+3.98425=103.9843(端数を足しているので誤差表示あります)
これを10年間繰り返します。
成長率 | 配当なし | 配当再投資 | 減少率 |
1% | 110.4622 | 108.2604 | -2.0% |
2% | 121.8994 | 117.1299 | -3.9% |
3% | 134.3916 | 126.6481 | -5.8% |
4% | 148.0244 | 136.8569 | -7.5% |
5% | 162.8895 | 147.8004 | -9.3% |
すると税引き後再投資していますから、現金で払い出して何もしないよりましですが、10年経つとやはり9.3%も劣後してしまいます。
インデックス型投資信託は、規約上分配することがある、と目論見書にありますが、余り分配金を出さないで元本に回して再投資してくれる商品が多いですが、複利効果が大きいことがよくわかります。逆に言うと20%強の税金の影響が大きいということですね。
注意しなければならないのは、投資信託を購入する時に、再投資型と分配型がありますが、たとえ再投資型であったとしても、分配がなされれば20.315%の源泉税が徴収された上で残りが元本再投資されるということです。ですから、各期の決算上分配をしないと決議してくれないと、最後の表のごとく複利効果が減殺されてしまう、ということに気を付けてください。
これが以前ここだけは読む目論見書のところで分配実績がなるべくない方が望ましいとした理由です。
またシミュレーションでは、毎期々々1%から5%の利益が生まれ続けるという前提で計算しておりますが、実際の企業としては、1株当たりの純資産に対する当期利益が5%~6%程度となっておりますので、株価純資産倍率1倍程度であれば、おおむね妥当なシミュレーションかと思われます。
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