かけこみリタイヤ―のダイヤリー

陰キャで隠居!58歳10か月でアーリー?リタイヤしました。

火渡りの科学

コーディーキャシディー、ポールドハディ共著「とんでもない死に方の科学」河出文庫を読んでいます。
P75に月面を裸足で歩いたら、という話が出てきます。
月の自転は1月に1回。
日の当たらない側は15日間冷え続けてマイナス153度に達する。
日の当たる側は15日間太陽光にさらされて最高123度に達する。
真空なので熱伝導度が低く、日蔭側でも裸で涼しい部屋に入った位の感覚だそうです。ただし水の沸点は低くなるので、体表面の汗は瞬時に蒸発し、その気化熱でぶるっとする。それくらい。
では日向側に裸足で踏み出したらどうなるか。
デスバレーよりちょっと暑いくらい。123度になっている月の地表面の放射熱があっても真空だからそれくらい。
ただし
足を置く場所には注意しないといけない。月の表面はほとんどが細かい砂で覆われていて、密度が低く軽いため、足が焦げるのではなく、足が月を冷やす格好になる。ところがたくさん転がっている月の石を踏んだら大変。石は足より密度が高いので、たちどころにジュージューと足の裏が焦げる。
まあ、いずれにしろ、加圧した宇宙船から、真空の状態に宇宙服も着ないで真空状態に出たら、10秒しないうちに気圧の変化で気絶するのだそうです。しかも1分程度は生きていられると。えっっ。

ところで足より密度の低い物質に足を載せると、なぜ熱く感じないのでしょうか。
足はかなり水分を含んでいる上、血液の循環で熱を全身に拡散してくれます。
水は比熱容量が高く、よく燃えた炭は比熱容量が非常に低い。そこで足の温度変化は炭の温度変化に比べるとかなりゆっくりになります。結果、足が接触した炭を効率的に冷やすことになるのだそうです。おまけに、炭は熱伝導率が低く、温度が高いのは足が接触する付近に限られています。
さらに炭の温度が下がり引火点を下回ると、燃焼が終わって、新たな熱は産出されないし、さらに熱伝導率の低い灰に覆われることも多い。表面は細かいでこぼこがあって*1足と密着している面積はかなり小さく、歩いていれば足が炭の上にある時間は断続的で、各接触時間も短い。
これらの理由でやけどしないのだそうです。

ということは、今言った条件が重ならない状態になるとやけどの危険があるということですね。
長時間炭の上に足をつけていると、炭の熱伝導率に追いつかれる。
炭に不純物が含まれている場合、金属や石が混ざっていると熱伝導率が高くなって危険。
炭は水分を含んでいるため、十分時間をかけて燃焼させて水分を十分に蒸発させておく必要がある。水は熱容量が大きく熱伝導率が高いので、やけどを負うまでの時間が短くなる。
足が湿っている場合、炭が足裏に付着し、接触時間が長くなる。

火渡りって条件が揃えば可能なんですね。いやー勉強になりました。


*1:活性炭を思い出します。