2021.5.19 3:55 山崎元のマルチスコープ
https://diamond.jp/articles/-/271500?page=3diamond.jp
を読んでいて、疑問に思って考えて、わかったことを解説します。(それにしても更新時刻…)
この記事の本筋は、インフレと株式投資の関係を考えるために、株式の理論価格の簡単なモデルを参照すると役に立つということで、
株価は、将来の利益の割引現在価値の合計として考えることができて、1株当たりの利益をE、割引率をr、利益の成長率をgとし、rとgは将来の時点に関係なく一定だとすると、理論株価Pは、P=E/(r−g)で表すことができる。
インフレ率がどう動こうとも、右辺の分母内で相殺して消えちゃうから、理論株価はインフレに中立です。ただし、期待収益率=名目金利+リスクプレミアムだから、名目金利にインフレ率が含まれているので、インフレ率が上がれば、その分期待収益率は上がりますよ、ということです。
・私がわからなかったこと一つ目
なんで名目成長率をひくの?
ではここで一株利益がこれから10年間ずっと同額と予想される100円の株式があったとしましょう。名目金利+リスクプレミアム=期待収益率5%とすると
年 | 利益 | 割引現在価値 |
1 | 100 | 100.0 |
2 | 100 | 95.2 |
3 | 100 | 90.7 |
4 | 100 | 86.4 |
5 | 100 | 82.3 |
6 | 100 | 78.4 |
7 | 100 | 74.6 |
8 | 100 | 71.1 |
9 | 100 | 67.7 |
10 | 100 | 64.5 |
当年度100の利益は100の価値でスタート。来年は100/(1+0.05)=95.2の価値、再来年は100/((1+0.05)^2)=90.7、以下同様に複利で減価していきます。
来年100で貰えるってことは、今年100は来年に105と期待しているから、来年の100は、100÷105=95.2 今現在95.2の価値しかないですからね。これが割引現在価値です。
さてでは、今度は毎年利益が5%ずつ増えていくとしたらどうでしょうか。
年 | 利益 | 割引現在価値 |
1 | 100.0 | 100 |
2 | 105.0 | 100 |
3 | 110.3 | 100 |
4 | 115.8 | 100 |
5 | 121.6 | 100 |
6 | 127.6 | 100 |
7 | 134.0 | 100 |
8 | 140.7 | 100 |
9 | 147.7 | 100 |
10 | 155.1 | 100 |
期待値による割引現在価値が、名目成長率で見事に打ち消されました。
例えば3期目は、110.3/((1+0.05)^2)=110.3/1.1025=100になります。
r-gはそういう意味だったんですね。
・私がわからなかったこと二つ目
当期利益を(r-g)で割り返すとなんで将来の割引現在価値の合計になるの?
割引現在価値をP、将来に渡って得られると予想される同額の利益をa、割引率rとすると、
(1)式の両辺に(1+r)を掛けると
(2)式から(1)式をひくと
将来一定と想定される利益を割引率で割ると永続の割引現在価値が求められることがわかりました。